講談社とサンケイリビング新聞社が発行していた老舗のタウン情報誌「TOKYO1週間」と「KANSAI1週間」が、2010年6月8日発売号をもって休刊した。
タウン情報誌は、流行のグルメスポットや観光スポット、イベント情報などを紹介。デートや買い物などに出かける際に便利だったが、最近はネットで目的地までの地図が入手できたり、リアルタイムでその場の雰囲気がわかったりするため、そもそも「雑誌」という形を取る必要もなくなった。
「情報の鮮度」や「臨場感」でネットにかなわず
「TOKYO1週間」の創刊は1997年11月、「KANSAI1週間」はその2年後の3月に創刊。雑誌を片手に、グルメでおしゃれなレストランやバー、イベントを訪ねて歩いた人も少なくなかった。ピーク時には30万部以上の発行部数を誇っていたが、最近は8万部前後と低迷していた。
編集部は休刊の理由を、「広告収入の減少など、経済的な理由です」と説明する。しかし雑誌は休刊するが、「引き続きエンタメ情報などを、WEB、ケータイ、電子書籍を使って、よりパワーアップした形て配信していく」と話している。
やはり、「敵」はWEBだった。グルメスポットもイベントも情報を確認できるし、ケータイのナビ機能を駆使すれば、地図もいらずに行きたいお店に連れてってくれる。「紙」が必要であれば、プリントアウトすれば済むことだ。
出版科学研究所の佐々木利春主任研究員は、
「タウン誌が重宝がられたのは、豊富な情報量にあって、それをまとめて見ることができた。読者はそこから行きたい場所選んで出かけた。まさに、それをいま誰もがネットでやっているわけです」
と、WEB情報がタウン誌にとって代わったと指摘する。
さらに、最近はブログやツイッターを使い、その場で、リアルタイムで起こっている出来事に感想まで添えて知りたい情報を教えてくれるのだから、1週間や1か月前のタウン誌の情報など劣化してしまっている。
前出の佐々木氏は「知りたい情報を得る方法として、ネット検索はすでに習慣として身についていますから、タウン誌に限らず雑誌を毎週、あるいは毎月買うことは少なくなるばかりでしょう。情報の鮮度や臨場感、人によっては情報の価値でも、ネットにはかなわなくなっています」と話している。
地元に住む人しか知らないような情報が売り物
数多くあったタウン情報誌だが、老舗で頑張っているのが角川マーケティングの「東京ウォーカー」や「関西ウォーカー」だ。ただ、「ウォーカー」シリーズも一時の拡大路線から現在は、東京や関西のほか、北海道や横浜、東海、福岡の6地域(隔週火曜日発売)になった。北海道や福岡は月刊誌に、また千葉ウォーカーは休刊に追い込まれている。
「東京ウォーカー」の発行部数もピーク時には30万部を超えていたが、最近は約8万部だ。こうした中で、同社が力を入れているのが「ウォーカー・ムック」。市や区、あるいは観光地など、より「局地的」なタウン情報や、おいしいラーメン店などのテーマを切り口にまとめている。地元に住む人しか知らないような人気店や催しを綿密に調べた独自ネタが「売りもの」のようだ。
出版科学研究所の佐々木氏は「最近は編集者の言葉で語った、辛口批評の雑誌が読まれているようです。情報過多なのでセグメントしてあげたり、実用的だったり。ネットにも載っていない情報を掘り起こすことを地道に続けるしかないのでしょう」といっている。