「ユーロ危機」折見 世記氏に聞く
ギリシャ、スペイン、ポルトガル… 欧州財政危機「第二のリーマン」か?

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中国の景気悪化は日本への影響大

―― こうした欧州の混乱は、日本経済へどのような影響を与えますか。

折見 日本にとっては、EUへの輸出が減ると言った直接的な影響以上に、中国経由の間接的な波及が心配です。EUの経済活動が低下し中国経済が影響を受ける。これがこわい。中国頼みの日本の景気はてき面に悪化します。たとえば、中国向けに輸出が伸びている工作機械などは打撃を受けるでしょう。
   さらに、中国の不動産バブルの崩壊が懸念されます。中国はいま、ホットマネーが流れ込んでいて、上海や深センなどの沿岸部から内陸部でもビルやマンションの建設ラッシュの要因になっています。しかし、これらは投機目的といえるものもありそうです。住宅需要があっても、価格面ではすでに人々の手に届かないものも増えてきました。そうなると不動産価格が下落して、投資資金が回収不能になる危険性が高まります。 欧州発の財政危機→世界中の投資家が安全志向を高める→ホットマネーが中国から流出→中国の不動産バブルの崩壊、という流れも懸念されます。

―― 先般エストニアがユーロ圏への加盟を決めたように、これまでEU加盟国は拡大の一途をたどってきました。それがギリシャ問題で風向きが変わったように思えます。どのように見ていますか。

折見 たしかに、これまで通りというわけには行かなくなったといえます。しかし、ユーロ体制が崩れるか、といえばそうではないでしょう。
   キーワードは「財政規律」です。ユーロ圏の中で早急に財政規律を守るためのチェック機能の強化やペナルティーの課し方をまとめるべきです。ユーロ圏にとどまるのであれば、財政状況は正確かつオープンにすべきです。それによって、なかなか資金調達できなくなる国もあるかもしれませんが、財政規律が守れない国は離脱する覚悟が必要ですし、それでもユーロに入りたいという国には加盟を認めるという、そのくらいの厳しさが必要でしょう。また、ハードルは高いでしょうが、ユーロ政府債の共同発行も検討すべきと思います。ギリシャがユーロ圏から離脱するかどうかは、最後の判断になります。

(プロフィール)
(おりみ せいき)
1986年神戸大卒、第一證券に入社。国際部、ロンドン現地法人駐在を経て、リサーチセンターに配属。2000年つばさ証券、02年UFJつばさ証券で投資情報部チーフ・ストラテジスト、05年三菱UFJ証券で投資情報部シニア投資ストラテジスト。10年5月から現職。
日経CNBCなどの番組に出演するほか、「週刊エコノミスト」や「ユーロマネー」などに執筆。日本証券業協会証券教育広報センター、東京IPO、株式新聞社主催セミナーなどの講師も務める。

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