様々な分野で利用が進む無料動画中継サービス「ユーストリーム」(Ustream)が、平松邦夫・大阪市長の定例会見にもお目見えした。ウェブサイトで会見の動画を配信したり、ライブ中継を行ったりする自治体は少なくないが、ユーストリームでの配信は異例。大阪市は、これまでコスト面の問題などからライブ中継を見送ってきたが、平松市長のトップダウンで、急きょ実現した。
過去にはコスト面で生中継断念
地方自治体のウェブサイトの整備状況はまちまちで、記者会見のページにしても、タイトルだけで会見内容が分からないものがある一方で、動画と文字起こしした内容を掲載している自治体も多い。その中でも、東京都、埼玉県、静岡県、三重県、宮崎県などでは、独自の配信システムを使って、知事会見の生中継を行っている。
一方、官公庁がユーストリームを活用した事例としては、2010年4~5月の「事業仕分け」の第2弾や、原口一博総務相が4月9日に大臣室から会見を開いたり、文部科学省が4月17日に「熟議フォーラム」と呼ばれる対話集会の様子を生中継したりするなどの事例がある。ユーストリームは、利用者登録をすれば、無料で動画配信できるのが特徴だ。
これまでの大阪市のウェブサイトでは、会見が終了して2~3時間後に動画が公開される仕組みだった。大阪市の情報公開室によると、過去にも他都市を参考にしながらライブ中継の可能性を複数回にわたって検討したが、いずれもコスト面の問題などで実現には至らなかった。
今回のライブ中継は、5月23日にツイッターを始めたばかりの平松邦夫市長(@hiramatsu_osaka)のトップダウンで決まったようだ。情報公開室によると、5月8日にユーストリームという具体的なサービス名を指定する形で、ライブ中継について検討するように指示があり、
「部署内で『ユーストリームやったやついるか?』ということになりました。『かじったことならある』という人が1人いたので、その人が直接の担当になりました」(情報公開室)
と、かなり慌ただしく準備が進んだ様子だ。
6月9日朝には、平松市長はツイッター上で
「いつから実施できるか未定ですが、市長定例会見をUstremで流す方向を検討するよう、昨日情報公開室に指示しました」
と書き込み、翌6月10日の14時の定例会見では、ユーストリーム中継が実現している。「お役所」としては異例のスピード対応だともいえそうだ。
「世間に改革が伝わっていない」
約35分間にわたって行われた会見の冒頭、平松市長は
「本日の会見から、ユーストリームを使って、(ネット上で)リアルタイムに見てもらうことになりました。すでに大阪市が持っている機材を使いますので、経費はゼロ。通信費のみです」
と胸を張った。その上で、
「なかなか世間一般に、大阪の改革が進んでいるという思いが伝わっていない。関東のメディアが、『大阪市は悪い』という思い込みで発信する機会も多い」
「大阪市の努力というものを、しっかり見て欲しいし、変えないといけない点を指摘してほしい」
などと配信の狙いを語った。
ただし、配信された画面は暗く、音声も終始割れ気味で、生中継を見た利用者も60人程度にとどまった。平松市長の狙いを実現するまでには、まだまだ試行錯誤が必要な様子だ。