「財務省の主張通り」
また、官僚機構に代わって、内閣の司令塔となるはずだった「国家戦略局」が機能しないまま数か月を空費したことは、経済政策で致命的だった。これは、初代国家戦略担当大臣だった菅氏の責任でもある。
これについて、「脱官僚」の本家本元とも言うべき菅総理は、今10年1月からの財務大臣就任以来、脱官僚をあきらめており、最近では財務省の主張通りに「増税路線」をまっしぐらだ。
実は、官僚主導と増税路線は見事に整合性がとれる。増税をいう前に、菅総理は「日本政府の借金は世界で金メダル」というが、実は「政府の資産も世界で金メダル」だ。具体的にいえば、借金が1000兆円ともいうが、資産も700兆円あるのだ。そのうち大半は、天下り先である特殊法人等への貸付金や出資金だ。要するに、借金のうち多くが、官僚の天下り先への資金提供になっている。もし天下り先を廃止や民営化すれば、その分借金は減少する。となれば、財政再建を行うとすれば、まず資産の圧縮に務めるのが先決だ。しかし官僚主導ではそうならずに増税となる。公務員給料も同じで、増税の前に公務員給料のカットが先決であるが、官僚主導では増税がさきにくる。
菅政権では、小沢斬りの後には、官僚主導と増税がいっしょにくるだろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。