菅新政権はどうなるだろうか。小沢斬りと清新なイメージで、予想通り内閣支持率、政党支持率は反転し急上昇した。鳩山・小沢体制では、参院選で40議席を割るぼろ負けだったといわれている。菅新政権では、安住淳選対委員長は2010年6月7日の両院議員総会後、参院選での獲得議席目標について「現有勢力を何としても維持したい」と述べ、改選の54議席以上を目指す考えを強調した。鳩山・小沢体制の時のように40議席を割るとなると、参院の安定多数のためには、公明党だけでは足りず、みんなの党まで含めた連立が必要になってくる。ところが、菅政権で50議席程度なら、公明党とだけ連立を組めばいい。今の勢いならば民主党だけでの安定多数も夢でなくなっている。
政権の柱はなんと言っても予算である。形式的には憲法による衆議院の優越性があるので、予算は衆議院さえ握っていれば成立させられる。ところが、予算だけ成立しても、実際には予算関連法がないと予算は動かせない。参議院の安定多数が求められるのは予算関連法まで確実に成立させるためだ。特に、予算関連法案のうち特例公債法(赤字国債の発行を認めるもの)が成立しないと予算全体の動きがストップしてしまう。
鳩山内閣は「脱官僚」失敗
いずれにしても、菅人気は1、2か月は持つだろう。この点からいえば、国会を多少延長して国民新党との連立維持に傾くと思うのは、部外者だけだ。支持率回復の恩恵を受けた民主党参院は、一刻も早く選挙がしたいので、国会延長なしの7月11日参院選を望む。菅政権としては、国会延長の場合、クリーンなイメージ作りのために小沢氏の政治倫理審査会出席さえ、民主党内の反小沢対小沢の抗争に利用する作戦を考えているだろうが、早く選挙したいという参院の意向は無視できない。国会を延長しなければ、2回目の検察審査会の小沢氏の起訴相当のダメージを避けることもできる。
ただし、政治とカネで小沢氏を踏み台にしながら、目先の支持率アップを目指しながらも、鳩山氏を引き継ぐ政策群では難問山積だ。
鳩山内閣の失敗の大きな要因は、「脱官僚」の体制づくりに失敗したことだ。特に、普天間問題では、政治主導ができず外務・防衛省官僚にしてやられた。安全保障問題として、鳩山前総理が「最低でも県外」と言ったこと自体の是非を論じるつもりはない(むしろ私見としては現行案以外を考えるのは難しいと思っている)が、もし「最低でも県外」という政治主張を実行したいなら、特別の専担大臣でも官邸内に作ってその部署に外務・防衛の一部の権限を委任し、外務・防衛省官僚を引き入れて行うくらいの覚悟が必要だった。