子ども手当のようなバラマキは埋もれてしまう
ご本人は「ケインジアン(ケインズ経済学者)」ではないと語るが、現在の日本で有数のケインズ研究者として知られ、失業(働ける人に働く場がないこと)が最大の非効率だとして、不況で民間の経済活動が不活発な時期は税金をとって財政で仕事を作り、雇用を増やせばデフレも改善し、消費も税収もやがて増える、と主張する。
ただし、所得制限のない子ども手当のようなバラマキは家計のやり繰りに埋もれてしまうから、学用品や学校の設備などに使えば子どもの便益になるとともに関連メーカーや業者に金が回り、雇用も増えると説く。
菅首相は、国家戦略相として2009年末に「新成長戦略」の基本方針をまとめたが、年明けに財務相に横滑りしてからは、就任早々、「1ドル=90円台半ばが望ましい」と円安誘導発言して「素人ぶり」(エコノミスト評)を発揮、さらに参院予算委員会で子ども手当の経済効果を聞かれて立ち往生したのが「かなりショックだった」(財務省筋)といわれ、以後、経済政策を猛勉強、小野氏からも数度の「講義」を受けたという。
2月にカナダで開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で、日本の厳しい財政状況を目の当たりにしたことで「明らかに意識が変わった」(財務省幹部)との指摘もある。
いずれにせよ、最近は財政再建に積極姿勢を見せるようになった。ただ、単純な財政再建論、増税論ではなく、成長戦略などを組み合わせるところがミソ。「元々経済に明るくはないが、勘がいい」(経済官庁幹部)と、霞が関でも財務相就任後の評価は徐々に上昇。