鳩山政権が倒れる要因のひとつとなった「政治とカネ」の問題をめぐり、これまでは小沢一郎前幹事長に対して「説明責任」を果たすように求めてきた民主党の新執行部が、「腰砕け」気味だ。「政治的責任はとった」「状況がかわった」などと説明するが、さっそく野党側は批判を強めている。
小沢氏の資金管理団体「陸山会」をめぐる収支報告書の虚偽記入事件で、2010年5月中旬の段階では、小沢氏が衆院政治倫理審査会(政倫審)に出席して疑惑について説明するというのが民主党の方針だった。だが、5月21日に東京地検特捜部が改めて小沢氏を不起訴処分にしたことから、出席の予定が白紙に戻っていた。このことから、新内閣や新執行部が、政倫審の開催についてどのようなスタンスを取るかが注目されていた。
枝野幸男幹事長は、幹事長に就任する前の段階では、政倫審の場などで、国民に対して説明責任を果たすように求め続けてきた。例えば、行政刷新担当相として5月13日に開いた記者会見では、
「(小沢氏の説明では納得していない)そのかなりの人たちに納得していただくということが、いわゆる『説明責任』という言葉で言われていることだと、私は認識・理解をしていますので、そのことを実現していただくことを期待しています」
と述べている。
ところが、6月7日に幹事長に就任した直後に開いた会見では、これを一変。
「幹事長を離れられるという政治的ケジメをつけられた以上は、今までと劇的に状況が違う。そうしたところ(検察審査会)の結論が出ていない段階では、個人としての法的な問題の防御権というのは一定の配慮をすべき」
と、小沢氏の政倫審出席には消極的な見方を示した。
「本人の申し出があって初めて実現する」?
細野豪志幹事長代理も、やはり政倫審の開催には否定的だ。細野氏は、6月8日朝に出演したTBS系の情報番組「朝ズバッ!」の中で、司会のみのもんたさんに
「政倫審や証人喚問、これが一歩後退したかのようなニュースが流れている」
と指摘されると、
「うんー、政倫審に関しては、ご自身の申し出があって初めて実現すること。小沢幹事長の在任中、そういうことについて前進しかけていた時期があるのは事実。ただ、枝野幹事長が言っているとおり、政治的には責任をとりましたから、あとは『法的にどうか』ということを別途考えたい」
と、煮え切らない答え。コメンテーターの早野透・桜美林大教授は、
「ちょっと枝野さんも期待はずれというか、これまでの自民党と同じ『辞めちゃえばいいだろう』ということ。ここはちょっとねー、小沢さんに気を使ってるんだな」
と、納得いかない様子だった。
菅首相も「一定のけじめつけた」
菅直人首相も、6月8日の首相就任会見で、
「これ(幹事長辞任)で十分と考えるかどうかは、色々な立場がある。党の中で重要な役職である幹事長を退いたことは、一定のけじめをつけたと言える。(枝野)幹事長を中心に、(連立相手の)他党の意見を聞いて判断したい」
と、小沢氏に一定の理解を示しており、どちらかと言えば消極的な立場だ。いわば、党内は「総崩れ」の様相だ。
野党側は、この腰砕けぶりを攻撃材料にしたい考えで、自民党の谷垣禎一総裁は、同日午後、早速ツイッターに
「枝野さん達の話を聞いていると小沢さんに捨てられないように必死で証人喚問から逃がそうとしているように見える」
と書き込み、新執行部に対する批判を展開している。