資生堂の前田新造社長とカーステン・フィッシャー専務が1億円以上の役員報酬をもらっていることがわかった。金融庁が1億円以上の役員報酬をもらっている上場企業の役員の氏名と金額を、2010年3月期分から有価証券報告書に記載して開示するよう義務付けたことに、前倒しして対応した。
企業の業績が悪いのに、社長をはじめ役員ばかりが高額の報酬を受け取っているとしたら、株主や従業員はおもしろくない。海外では数億円の高額報酬もめずらしくはないというが、いったい、どんなトップが1億円以上をもらっているのだろうか。
資生堂は社長と専務で2億6200万円
資生堂は、前田新造社長1億2100万円、カーステン・フィッシャー専務1億4100万円、岩田喜美枝副社長6600万円の3人の役員報酬を、2010年6月25日に開く株主総会の召集通知に記載し、開示した。
本来であれば、株主総会後に開示する有価証券報告書に記載すればいいのだが、同社はそれを前倒し。株主総会の召集通知に記載した。同社広報部は「情報開示の一環として考えています。(有価証券報告書をみれば)直にわかることですから。おそらく来期も踏襲することになるでしょう」と話している。
また、野村ホールディングスも株主総会の召集通知に、渡部賢一社長など取締役と執行役ら(計20人)の報酬総額を開示した。その金額は19億6700万円(ストック・オプションによる報酬などを含む)に上る。一人あたり平均9835万円になる。有価証券報告書の開示を待つことになるが、渡部社長が1億円を超えるのは間違いない。
企業のIR情報を発信する野村インベストメント・リレーションズ(IR)によると、「いずれは開示しなければならないものですが、いち早く開示することはいいこと」と話し、「数社くらい続くのではないか」とみている。
資生堂のように、個人名を明かして開示したケースは初めてだ。
日産は役員10人で25億8100万円
1億円以上の役員報酬の情報開示については、いまだに反対の声がくすぶっている。亀井静香・金融担当相は、「実績を上げて、胸を張ってもらえばいい」というが、ある大手銀行の幹部は「すでに有価証券報告書には総額を開示している。リーマン・ブラザーズが経営破たんしたときに、幹部が法外な報酬を受け取っていたのは確かに問題ではあるが、一人ひとりの開示となると個人情報の類になる」と慎重だ。
また、「1億円の意味がわからない。半分近く税金などにもってかれることを考えると、そんなに高額なのか。嫉妬が強いのではないか」との声もある。
業績悪化で批判を浴びた例では、2009年6月に日産自動車のカルロス・ゴーン社長がヤリ玉に挙げられたのは記憶に新しい。09年3月期は純損益で2337億円の赤字だったのに、10人の役員の合計で25億8100万円を受け取っていた。
業績悪化が伝えられる新生銀行では、10年3月期に1401億円の連結最終赤字を計上したのに、1億円を超える報酬を受け取る外国人幹部がいるとも伝えられていて、金融庁が目を光らせているという。
企業コンサルティングファームのプライスウォーター・ハウス・クーパーズの調べによると、09年度の社長の報酬総額(現金、ストックオプション、退職慰労金など)の平均は約5000万円。08年度に比べると、1000万円ほど下がっている。