金融庁は2010年5月27日、中小企業向け融資専門の日本振興銀行に対し、新規の大口融資や預金の勧誘などを4カ月間停止する一部業務停止命令を出した。金融庁が指摘した「重大な法令違反」や「経営管理態勢に関する問題」は計10項目に及ぶ。
振興銀は、経営破綻した商工ローン大手のSFCG(旧商工ファンド)から買い取った貸出債権が二重譲渡だった問題も抱えており、経営の立て直しは容易ではない。
銀行とノンバンクの中間に位置する金利で無担保融資
「定期預金の解約に応じない」「振興銀が推薦した取締役の就任を融資の条件にした」「金融庁の検査官に提出するメールを意図的に削除した」。金融庁が行政処分の根拠として列挙した数々の法令違反や管理態勢の問題点は、振興銀のずさんな体質を浮き彫りにした。
振興銀は中小企業への「貸ししぶり・貸しはがし」が社会問題化していた2004年4月、日銀出身で金融庁顧問も務めた木村剛氏が中心になり、中小企業融資の専門銀行として設立された。銀行とノンバンクの中間に位置する年利数%~十数%で無担保融資するというビジネスモデルだったが、不良債権処理を一段落させた大手行や地銀が中小企業融資を競い始める中で、融資先の貸し倒れリスクを判断する独自のスコアリング(点数付けの仕組み)が行き詰まった。
そうした状況から抜け出そうと、貸出債権の買い取りに業務の軸足を移したことが、経営をさらに苦しくさせた。手っ取り早く業容を拡大する狙いだったが、SFCGから買い取った債権は、他の4信託銀行にも譲渡されていたことが判明。所有権をめぐり、信託銀行との訴訟に発展した。振興銀は所有権の正当性を主張しているが、訴訟の結果によっては多大な損失が発生する恐れがある。
金融庁が今回の処分で特に問題視したのも、この債権買い取りをめぐる取引。振興銀は一定期間後に手数料を取ってSFCGに債権を買い戻させる契約を結んだが、この取引が事実上、債権を担保にした融資に当たり、手数料を金利に換算すると出資法の上限(年29.2%)を超える疑いがあるというのだ。