自分の名前を間違えられるのはあまり気分のいいことではないが、「きょう子」の「ょ」の字が表示できなくて、「きよう子」と印字された健康保険証や年金手帳を、大分年金事務所が会社員の女性に渡していた。
いまどき「ょ」が出力できないシステムなど考えられないし、それではJIS規格だって通らないだろう。そんなことってあるのか。
1980年導入のシステムに問題なし
2010年5月上旬に大分市内に住む会社員の女性が事務所を訪れた。大分年金事務所によると、その女性は改名に伴い、名前の変更を届け出たが、新たに発行された健康保険証や年金手帳などの名前が「きよう子」となっていた。
「きょう子」の「よ」の字が大きく印字されていたので、女性が修正を求めたところ、対応した女性職員が「うちのシステムは『ょ』の字が入力できない」と説明して、代わりに大きな「よ」と入力した。
その際に女性は、「いまどき『ょ』が出ないなんておかしい」と訴えたが、一たんは帰宅。後日、改めて事務所を訪ねた。
事務所が調べたところ、システムに問題はなく、たんに対応した女性職員が入力の仕方を忘れていたようだ。「システムは1980年に導入したものですが、追加でバージョンアップをしていますから、『ょ』の字が出ないことはありません。入力方法は多少特殊ですが、対応する職員にも入力方法は説明しています」と説明。こうしたミスも、この1件だけという。
大分年金事務所は会社員の女性に謝罪し、正しい名前の健康保険証と年金手帳などを再発行した。
入力の機会減って、やり方忘れた?
通常のパソコンであれば、ローマ字入力で「KYO」と入力すれば、「きょ」と出力される。大分県年金事務所では、「うちのシステムでは、小さな『よ』や『つ』を入力する場合、1字ずつ文字をつくって登録する必要があります。変換できなかった『きょう子』も事前に登録履歴があれば、すぐに出せたのでしょうが、おそらくそれがなかったと思われます」と話す。
また、ここ数年、システムへの入力作業は年金事務を集中処理する大分県事務センターが行っており、事務所での入力作業は緊急時のときくらいと、入力機会が減っていることもある。
「入力方法を教えても1、2か月作業がないこともありますし、急ぎということもあってあわててしまったのだと思います」(大分年金事務所)と、女性職員をかばう。
とはいえ、年金事務所のシステムは全国どこでも同じものを使用しているので、今回のようなことは他県でも起こり得る。日本年金機構は、「たしかに小さな『よ』などは最初に単語登録が必要です。大分県の件はそれがされてなかったのだと思います」という。
いまどき、なんとも手間のかかるシステムだが、「費用がかかることですし、いまのシステムを踏襲することになっています」と、新たなシステムへの変更は当分ないようだ。