米ドルやユーロ、ブラジルのレアルや南アフリカのランドなどの新興国通貨などを選んで投資する「通貨選択型」投資信託が人気を呼んでいる。投信自体の運用利益に加えて、選んだ通貨の国と日本円との将来の金利差による「上積み利益」が得られるためだ。
ただ、最近のユーロや英ポンド、豪ドルなどの急落で、外国為替相場は急激な円高が進行中。通貨選択型投信の基準価額も下げぎみで、リスクも小さくない。
値上がり益に、「為替ヘッジプレミアム」、さらに為替差益
通貨選択型投資信託は、ふたつの通貨を将来、一定の金利で交換することを約束した投信で、通貨間の金利差が大きいほど得られる利益が大きくなる「為替ヘッジプレミアム」があるのが特徴だ。
投資対象はハイ・イールド債(高利回り債券)や日本株、海外債券、商品先物やREITなど、通常の投資信託と同様にさまざまな金融商品に投資する。
投資家が手にできる利益は、通常の投信と同じ資産運用による値上がり益に加えて、為替ヘッジプレミアム、さらに選択した通貨と日本円との為替差益の、3つがあるわけだ。
野村証券が取り扱う通貨選択型投信は、2009年1月に発売した「米国ハイ・イールド債投信」をはじめ全部で13本。「通貨コースに分かれていますし、1通貨で2コースある商品もあるので。全部で130通りの中から選べます」というから、どれを選んでいいのか迷ってしまいそうだが、純資産残高は約2兆円で、「人気商品です」と胸を張る。
人気の通貨はブラジルのレアルや南ア・ランド、豪ドル。レアルと円との金利差は8~9ポイント、南ア・ランドと円との差も6~7ポイントもある。投資家にとっては金利差の魅力もあるが、「その国への期待感も加味して選んでいるようです」と話す。
欧州危機で基準価額が下落
ギリシャの財政危機に端を発した欧州の信用不安によって、約1か月前に1米ドル93円台、1ユーロ120円の水準にあった外国為替相場は、一気に1米ドル88~90円台、1ユーロ110~113円台まで円高に進んだ。
通貨選択型投信は、投資対象の金融商品と外国為替の「二重のリスク」がある。利益が上がるときも大きいが下がるときも大きいわけだ。この1か月のように為替が激しく動けば、当然影響を受けるし、さらには円高によって株式相場も下落したので、他の金融商品の運用環境も悪化した。
野村証券の「野村米国ハイ・イールド債券投信」でみると、2010年4月末に1万3780円あった基準価額は、5月27日には約11%下落して1万2226円になった。とはいえ、「分配は基準価額が反映されるのはもちろんですが、債券の利子収益などから安定的な分配をめざしています」(野村証券)ということだ。