米アップルの新型携帯端末「iPad(アイパッド)」が2010年5月28日、国内発売された。4月に先行発売した米国では1カ月に100万台超を売り、同社のスマートフォン(多機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」を上回るハイペース。
日本では当初予定から1カ月遅れた発売になり、主要な店では、待ちかねたファンが前夜から行列をなす社会現象となった。ただ、日本ではソフトの品ぞろえが米国よりは貧弱であるなど条件が違い、米国のように売れるかどうか、懐疑的な見方もある。
情報の飢餓感をあおり、話題性を高めている?
アイパッドの国内販売にあたり、アップルは販路をかなり絞り込んでいる。NTTドコモなどを押しのけて、携帯電話回線提供を勝ち取ったソフトバンクは、わずか16の直営店でのみでの取り扱いになり、全国約2500の代理店には置かなかった。家電量販店での扱いは、大手5社の約1500店のうち、1割にも満たないわずか136店。この結果、青森、秋田、鳥取、島根、山口、佐賀の6県では取り扱う店自体が県内にゼロという事態になった。6県の住民はネットで売っていないタイプが欲しければ遠出するほかない。
アップルは販売戦略について「ノーコメント」を貫くが、家電量販店によると、アップルが各チェーンのどの店で売るかまで指定しているようだ。一方で発売解禁時刻などの情報は直前まで知らされず「準備の都合もあるので何とかしてほしい」と量販店側に戸惑いの声が聞かれる。
アップルは在庫状況などを一般に知らせないため、予約していない消費者でも買えるかどうかも、よく分からない。「情報を小出しにすることで情報の飢餓感をあおり、話題性を高めている」(家電大手)との推測も多い。こうした手法には、消費者の不満はあるが、そこは世界的な人気商品とあって、「売り手市場」の強気商法が許されているわけだ。