迷走に迷走を重ねた鳩山政権による普天間移設問題は、とりあえずの「決着」のはずの5月28日当日も迷走の上塗りをした。その結果、鳩山由紀夫首相による発表が、予定より遅れに遅れた。移転先の辺野古明記を巡り、対米国用と対社民党用の2枚舌で乗り切ろうとしたが、うまく調整できなかった形だ。
2010年5月28日9時、当初予定より2時間遅れて日米共同声明が発表された。移転先について「辺野古地区及びこれに隣接する水域に設置する意図を確認した」との文言が盛り込まれた。「最低でも県外」といった鳩山首相の発言は、結局果たされなかったことが明確になった。
福島大臣「ダブルスタンダード」
事実上ほぼ従来案通りの埋め立て方式に戻ったとされる「工法」については、「検討を速やかに(いかなる場合でも10年8月末日までに)完了させ」との表現だった。「7月の参院選までは公表しない形に……」との配慮のようにも読める。
ここまではほぼ予定通りだった。しかし、正午過ぎに予定していた臨時閣議が開けない事態に陥った。社民党党首で消費者・少子化担当相でもある福島瑞穂氏が、署名も辞任もしない方針を曲げない姿勢を崩さなかったためだ。政府は、日米共同声明には辺野古を明記しつつ、閣議にかける政府方針には辺野古の文字を入れない「2枚舌」作戦で社民党の理解を得ようとしたが、当の福島氏から「ダブルスタンダード」と批判された。
鳩山首相は、「福島氏の罷免の覚悟を固めた」とも一部で報じられたが、福島罷免を受けた社民党が政権を離脱するのかしないのか、の読みがブレたことも影響し、昼の段階では決断できず、ここでもフラフラした印象を与えた。
その社民党内も迷走気味だった。連立維持重視派の又市征治・副党首は27日、福島党首に閣議で署名するよう迫り、産経新聞などによると「(党首を)罷免するよ」とまで口にしたという。阿部知子・政審会長も連立重視の考えを度々表明していた。ところが、28日には党の両院議員懇談会で、福島氏が閣議で署名しない方針を支持する確認をした。罷免後の対応についても、連立離脱の方向になると話した幹部も出た。