英国の呪われた土地に「再臨」 21世紀版「切り裂きジャック」

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   売春婦を残忍な方法で次々と殺害し、姿を消した「切り裂きジャック」。19世紀、英国で起きたこの殺人鬼による猟奇的犯罪を思い出させるような事件がまたも発生し、英国民を震え上がらせている。

   逮捕されたのは、大学院で犯罪学を学ぶ40歳の男性。彼は研究の題材に切り裂きジャックを選んでいたとの報道もある。そしてこの事件の舞台となった土地では、30年前にも女性の連続殺人事件が起こっていた。

「大型トカゲのえさにネズミ」変人として評判

   英国の西ヨークシャー州ブラッドフォード市で2010年5月24日(英国時間)、行方不明となっている3人の女性を殺害したとして英国人男性が逮捕され、27日に起訴された。ブラッドフォード大学の大学院博士課程で犯罪学を専攻していた、スティーブン・グリフィス被告(40)。検察当局は、グリフィス被告が3人を殺害した十分な証拠があるとして起訴に踏み切ったとした。

   英メディアはこの事件を大きく取り扱っている。実は被害者の3人の女性は売春婦で、このことが1888年にロンドンで起きた「切り裂きジャック」による連続殺人事件を思い起こさせるためだ。またグリフィス被告の大学院での研究テーマが1847~99年の「英国殺人事件史」で、切り裂きジャック事件の時期と重なっていることも注目を浴びている理由のようだ。売春婦ばかりを狙った切り裂きジャック。被害者はのどや体を切り裂かれ、内臓が引き出されるといった凄惨な殺人だ。しかも犯人は特定されず、事件は「お蔵入り」となっている。その後、映画やドラマ、小説の題材として何度も取り上げられた。

   英デイリー・テレグラフ紙(電子版)によると、グリフィス被告本人は自身のウェブサイトに、「オレは最悪の場合、悪魔になる」と書き込み、学術的な興味分野として「連続殺人、集団殺人、死刑」を挙げていた。また英ガーディアン紙(電子版)は、グリフィス被告が天候にかかわらず常にサングラスをかけ、ペットに大型のトカゲを飼っており近所では「変人」に見られていたと書いている。トカゲのエサにネズミを与え、ひもを付けて歩かせるのが好きだったという住民の証言も紹介している。

30年前にも「ヨークシャーの切り裂き魔」

   逮捕の決め手となったのは、グリフィス被告が住むアパートの監視カメラ映像だった。デイリー・テレグラフ紙によれば、男が若い女性を押し倒してボウガンでその頭部を打ち抜いた後、女性の体を引きずって画面からいったん消えるが、その後ゴミ袋とリュックサックを持って行ったり来たりしているという衝撃的な内容だという。映像の中の女性は、行方不明となっている3人のうち1人と見られ、アパートの管理人から通報をうけた警察がグリフィス被告の身柄を確保。翌日には、ブラッドフォードから4マイル北にある川から、この女性の遺体が切断された形で見つかった。頭部はリュックサックに入っていたという。

   今回の事件の舞台となったヨークシャー地方は、30年ほど前に起きた類似の猟奇殺人とも深くかかわっている。「ヨークシャーの切り裂き魔」と呼ばれ、13人の売春婦を次々と殺害したピーター・サトクリフ受刑者の出身地なのだ。グリフィス被告が住むブラッドフォードでも3人の売春婦が殺害されている。1981年に逮捕、起訴され終身刑となったが、84年に精神を患い医療刑務所に移され現在も存命している。サトクリフ受刑者の釈放については、当時任期中だったブラウン前首相が「まずありえない」とコメントしたと、デイリー・テレグラフ紙は伝えている。

   グリフィス被告が切り裂きジャックや、ヨークシャーの切り裂き魔から直接影響を受けたかどうかは現時点では不明だが、日々の「研究」の中で犯罪そのものに深い関心を示していたことは事実だ。真相の究明はこれからとなるが、過去に発生した思い出したくもない悲惨な事件が、同じ土地でまたも起こってしまったのは悲劇としか言いようがない。

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