口蹄疫(こうていえき)問題で、九州の動物園や牧場は施設内の消毒を強化したり、動物とのふれあいコーナーを無期限で自粛したりして、感染防止に力を入れている。
口蹄疫に感染する可能性があるのは、ひづめが偶数個ある偶蹄類の動物で、牛、豚、ヤギ、羊などの家畜や、イノシシ、シカ、ラクダなどの野生動物だ。
宮崎市フェニックス自然動物園は口蹄疫予防のため、2010年5月17日から臨時休園している。期間は未定。宮崎市公園緑地課によると、キリン5頭、フタコブラクダ4頭など偶蹄類の動物14種類141頭を飼育している。宮崎県都城市の高千穂牧場も感染予防のため、牧場施設への立ち入りを禁止している。
現場は緊張状態でピリピリ
熊本県阿蘇市の動物園、阿蘇カドリー・ドミニオンには100種類800頭の動物がいる。このうち偶蹄類(羊、牛、ヤギ、ミニブタ、シカ、ラマ)はおよそ50頭だ。5月22日から餌やりとふれあいを自粛している。また、ゴールデンウィークから入園口に設置している消毒用マットの消毒液を口蹄疫対策用に切り替え、ヤギ、牛のエリア付近にも消毒用マットを敷いている。飼料を積んだ車などの業務用車両の消毒も始めた。
広報担当者は、
「阿蘇は酪農が盛んな地域です。どこから菌が入ってくるのかわからず、目に見えないので怖い。現場は緊張状態が続いていて、ピリピリしています」
と話している。
ホームぺージで口蹄疫予防対策を告知している動物園もある。大分県別府市の動物園、別府ワンダーラクテンチも消毒の徹底と、ヤギ、羊、アルパカ、イノシシのふれあいを中止している。熊本県阿蘇郡の体験型牧場、阿蘇ミルク牧場は駐車場入り口に消毒剤を散布し、入園者に車の消毒をお願いしている。大分県竹田市のガンジーファームはヤギと羊の餌やりを中止した。
「せっかく来たのに何もできない」と苦情も
福岡県の動物園や牧場でも警戒が高まっている。県は口蹄疫防疫対策本部を5月21日に設置し、24日に県内4カ所の家畜保健衛生所で対策会議を行った。県畜産家の担当者によると、消毒の徹底、部外者の立ち入り禁止、偶蹄類とのふれあいの中止などを決めた。
福岡市動植物園は5月20日から餌やりを中止している。また入園口で靴裏の消毒を強化し、入園者はマットの上をゆっくりと確実に歩くようにお願いしている。
福岡市のもーもーらんど油山牧場では、牛98頭、羊30頭、ヤギ11頭を飼育し、年間30万人以上が来場する。ゴールデンウィーク前に餌やりを止め、5月4日から羊やヤギとのふれあい、家畜舎内への入場を中止した。5月17日から搾乳体験や乗馬体験も自粛し、5月24日から家畜舎近くの遊歩道を閉鎖した。
お客から「せっかく来たのに何もできない」と苦情もちらほら出ているが、広報担当者は、
「大部分の牛は農家から預かりもので、感染させるわけにいきません」
といい、今は動物を守るのが先決との考えだ。
北九州市の動物園、到津の森公園はヤギ28頭、キリン2頭を飼育している。年間38万~39万人が来園する。
5月24日にヤギとキリンの餌やり、ヤギとのふれあい、動物の寝室見学を休止した。お客から「せっかく来たのにできなくて残念だ」と不満が上がっている一方、「これだけ広がっているので仕方ない」と納得する人もいる。しかし、ヤギの餌やりはもっとも人気が高い。かき入れ時の夏休みも迫っている。事業管理担当者は「1日も早く事態が収まって欲しい」と願っている。