「収益モデルが見えない」とされるツイッターをめぐり、新たな動きが起こっている。つぶやきに広告を挿入する「インストリーム広告」が米国を中心に広がっているが、ツイッター側が、「タイムライン」と呼ばれる画面上での第3者による広告表示を禁止する方針を打ち出した。
ツイッター側は、「長期的な利用者の経験を守るため」などと説明しているが、「競合する自社サービスを守るため」との指摘も出そうだ。
日本でも「オプト」などがサービスを発表したばかり
ツイッターの「インストリーム広告」では、利用者が専用サイトに「パブリッシャー」として登録し、広告主はパブリッシャーの属性(性別・年齢層)などを見て、広告メッセージの出稿を申し込む。パブリッシャーが申し込みを承認すると、広告メッセージが自らの「ツイート」(つぶやき)として発信される、というものだ。ツイートが配信されると、パブリッシャーは報酬を受け取る仕組みだ。
米国でインストリーム広告を展開している代表的な会社が「ad.ly」だ。トップページには「ツイッターで4000万人以上のユニークユーザーにリーチできる」とあり、
「ツイートのうち5つに1つがブランドに関連するもの。メディアで最も著名なブランドに対して、ツイッターで新たなコミュニケーションの手段が開かれる」
などとうたっている。
サイト上で紹介されているパブリッシャーの中には、フォロワー数が100万人を超えるアカウントが37もある。ビジネスとしても有望視されている様子で、同社は10年5月に、投資ファンドなどから500万ドル(約4億5000万円)の資金調達に成功したばかりだ。
国内でも、2010年5月24日に、広告代理店の「オプト」などが、「つあど」と呼ばれるインストリーム広告のサービスを発表したばかりだ。
ツイッター自身も10年4月に、検索結果ページの上部に広告メッセージが表示される「プロモーテッド・ツイーツ」(Promoted Tweets)と呼ばれる広告プログラムを発表している。
そんな中、波紋を呼んだのは、ツイッターが5月24日(米国時間)に行った発表だ。同社は公式ブログで、
「ツイッターのAPI(公開された機能)を活用したいかなるサービスにおいても、第3者がタイムライン(ツイートの一覧画面)に有料広告ツイートを挿入することを許可しない」
と、タイムライン内の広告を禁止する方針を打ち出し、この内容が盛り込まれた利用規約も発表された。
自社サービスを守ることが目的?
広告禁止の理由については
「第3者の広告ネットワークは、広告の表示回数やクリック率を最大化しようとして、利用者の不満をもたらし、ツイッターの成長を妨げる可能性がある」
「第3者の広告ネットワークは、利用者の最良の経験を犠牲にして、短期間での収益化に走る可能性がある」
と説明。広告ツイートが連発されてタイムラインが広告で埋まることを懸念している様子だが、「自社サービスを守ることが目的なのでは」といったうがった見方も出そうだ。
悪者扱いをされている形のインストリーム広告事業者だが、現段階では表だった反論はしていない。前出の「ad.ly」は、
「ツイッターがインストリーム広告の基準作りに努力していることに敬意を表す。Ad.lyは、設立時から、ツイッターが承認したガイドラインや利用規約にしたがって運営してきた。広告主やパブリッシャーにとっての長期的な価値を創造し続けることを楽しみにしている」
とコメント。だが、今回の規約改正で、サービスがどのように影響を受けるかについては言及していない。国内のサービスも同様で、「つあど」は5月25日8時25分に公式アカウントで
「twitter社の利用規約更新に伴い、それに準拠すべくサービスの改修を行うか否かの検討を本日行います」
と発表したものの、夕方時点で対応方針は決まっていない。
今回の方針をめぐっては、米メディアから「ツイッターの影響力が強まっていることの表れ」といった指摘も出ている。例えばロサンゼルス・タイムズのブログでは、
「今回の動きは、ツイッターの様なひとつのプラットフォームに依存しすぎる会社にとっての危険性を浮き彫りにした。じょじょにツイッターが、このような会社の事業について生殺与奪の権を握る可能性もある」
と論評している。