みずほフィナンシャルグループ(FG)は、前田晃伸FG会長(65)=旧富士銀行出身=、傘下のみずほコーポレート銀行の斎藤宏会長(66)=旧日本興業銀行出身=、みずほ銀行の杉山清次会長(63)=旧第一勧業銀行出身=の3会長が2010年6月下旬にそろって退任する人事を発表した。
悪名高い、会長と頭取合わせて「6トップ体制」を刷新することで、最大8000億円の普通株増資への理解を求める狙いがある。ただ、合併前の旧3行の「縄張り意識」を残した体制は変わらず、組織の一体化や効率面での問題は残ったままだ。
「黒字基調が定着する見極めができたので退任したい」
「『黒字基調が定着する見極めができたので退任したい』と今週、本人から申し出があった」。塚本隆史みずほFG社長は5月14日の会見で、前田会長らの退任理由をこう説明した。
しかし、3会長退任の背景には、金融庁の強い意向があった。関係者によると、塚本社長と傘下銀行の2頭取は2010年4月中旬、金融庁幹部と会談。金融庁側は、他の2メガバンクに見劣りする資本の薄さ、収益力の低さを指摘したうえで、責任の所在がはっきりせず効率の悪い「6トップ体制」に苦言を呈したという。
前田、斎藤両氏は、旧富士、旧日本興業、旧第一勧業の3行が統合・再編してみずほFGが発足した02年、それぞれFG社長とコーポ銀頭取に就任。杉山氏は04年にみずほ銀頭取に就いた。3氏は09年3月期にみずほが巨額赤字を計上しながら、そろって会長に「昇格」し、後任社長・頭取も旧3行のたすき掛け人事とし、金融界をあきれさせた。
3会長は2年程度務めるとみられていた。だが、みずほは国際的な銀行自己資本規制の強化を受け、他の2メガに「周回遅れ」の差をつけられている。この差を挽回する第1歩として不可欠なのが、今回の最大8000億円の増資。
大型増資に理解を得るには、3会長退任が必須
ただ、10年3月期の連結最終利益の水準も他の2メガに及ばず、1株当たりの株主利益を希薄化させる大型増資に理解を得るためには、3会長退任が必須というのが金融界の一致した見方だ。金融庁も、こうした方向に誘導しようと陰に陽に、圧力をかけたといわれる。
3会長がトップに君臨した6~8年間に、みずほの業績は3メガで最下位に転落し、斎藤氏の「女性問題」も発覚するおまけもあった。3会長退任を受け、金融庁関係者は「3人そろって退任して影響がないなら、そもそも必要なかったということだ」と切り捨てる。
塚本社長は14日の会見で、斎藤氏の女性問題について「過去のことなので忘れた」と気色ばみ、傘下の2行体制を「顧客のニーズに合っている」と、ひとまずは従来路線を継続する考えを強調した。ただ、旧3行意識から脱却し、真に一体感ある経営に舵を切っていくことが、今後のみずほ浮上に不可欠というのが常識。いつ、どのように経営を刷新していくのか、塚本社長らの手腕が問われる。