本当に強い通貨は「中国元」
第一生命経済研究所の主席エコノミスト嶌峰義清氏は「『円高』というからイメージとの乖離が出てくるのであって、『ドル安』『ユーロ安』と評したほうがいいでしょう」と、為替相場の現状をそう話す。
米国での株価下落は、「発表された経済指標が思いのほか弱かったことで嫌気がさしたことがある。欧州のようすも含めて、不透明だからリスクの高い株を手放したり、益出ししたりしている」と説明する。
欧州の財政不安に、米経済指標の悪さと心理的に後ろ向きなことが重なったところがある。いまの円高は少々行き過ぎのようでもある。
嶌峰氏は、「本来、国の力が通貨の力と考えれば、中国元はかなり強いはず」という。中国は世界最大の経常黒字国であり、実質GDP成長率の高さをみれば明らか。内需拡大も持続的だ。欧米景気に悪化の懸念が生じても、中国が相対的に高い成長を保ってくれるという期待もあって、「人民元の独歩高になってもおかしくない」という。
中国元といえば、「切り上げ」が話題で、エコノミストの一部には「欧州の財政問題が片付いたら、中国の元切り上げが待っている」との見方もある。
嶌峰氏は「中国の内需がさらに高まり、インフレ圧力が著しく高まれば、切り上げも考えられる」とみている。