3大牛丼チェーンの中で「独り負け」しているなどと報じられた吉野家ホールディングス(HD)が、ウェブサイト上で異例の反論文書を発表した。2010年の連結決算では89億円という過去最悪の最終赤字を計上した同社だが、文書では、赤字は「株式会社吉野家以外の関連子会社の業績によるところが大きかった」と、単体ベースでの業績は、それほど悪くないことを強調している。
牛丼チェーン大手3社をめぐっては、10年3月期(吉野家は10年2月期)の連結決算の最終損益を比べる限りでは、「松屋」を傘下に持つ松屋フーズが10億円の黒字、「すき家」を運営するゼンショーも35億円の黒字を計上。これに対して吉野家HDは89億円の赤字を計上した。これを受けて、各社は「吉野家『独り負け』」などと報じた。
「牛丼事業が大赤字」と読み取れる報道も多かった
だが、「昨今の一部報道機関の報道について」と題して10年5月14日に発表された文書では、牛丼の「吉野家」単体ベースでの10年2月期の売上高は904億6000万円で、経常利益は20億7300万円だったことを紹介。その上で、
「株式会社吉野家ホールディングスの2010 年2 月期の赤字決算は、主に株式会社吉野家以外の関連子会社の業績によるところが大きかったにも拘らず、吉野家が赤字の主因のように受け止めている方が多かったので、皆様にはご理解いただきたいと思います」
と主張。同社の社長室広報担当でも、「連結対象の『京樽』や『どん』の赤字が響き、HDとしての業績が良くなかったのは確か。しかし、『牛丼の事業自体が大赤字』のように読み取れる報道も多かった」などと説明しており、言わば「単体ベースでは『言われている程悪くない』」ことをアピールしたい考えのようだ。
さらに文書では、通常380円の並盛りを270円に引き下げることを目玉に、4月7日から13日にかけて行ったセールについても言及。このセールについては、吉野家が値下げした直後に「松屋」「すき家」が追随したため、「あまり効果がなかった」との指摘も相次いだ。
「独り負け」と言われても仕方のない状況
だが、文書では、
「4月のセールにつきましても『効果が薄かった』という内容の記事がありましたが、セール期間中の入客数は前週比平均で203.8%でした。また、先月の営業実績は下記の通り(編注: 1店舗あたりの平均売上高が月間760万円)でした」
とセール期間中は客数が倍増したとした上で、
「因みに、売上高についても勝ち負けで敗者のごとき論評ですが、少なくともこれまで吉野家が劣ったことはありません」
とまで書いている。
だが、吉野家既存店の10年2月期の売上高は、前年同期比で8.4%減少している。4月16日の決算発表会の場でも、松尾俊幸・財務戦略室長が
「上場外食産業の単純平均(編注:08年比で5.7%減)と比べても(売り上げが)ビハインドしていた(下回っていた)ところが、大きな減収の要因だ」
といい、「独り負け」という言葉こそ使わなかったものの、業界平均よりも不振だという事実を認めている。
さらに、このセール期間を含む10年4月の既存店の実績を見ると、売上高は前年同期比6.9%減、客数は同3.2%減、客単価も3.9%減。一方、すき家の既存店では、客単価こそ10.6%減少しているものの、売上高は23.2%増、客数も37.9%増だ。松屋の既存店も同様で、客単価14%減、売上高5.9%増、客数23.2%増だ。吉野家のセールが、全体の業績をけん引するには至っておらず、やはり「独り負け」と言われても仕方のない状況だ。