東京、名古屋、大阪といった大都市の新車ディーラーの経営に対する危機感が強まっている。その最大要因は、法人需要の減少に歯止めが掛からないことにある。2009年度(09年4月~10年3月)の国内新車市場(登録車と軽の販売合計)は、エコカー減税や補助金といった政策による支援で、後半から前年超えが続いてきたが、その購入者のほとんどは個人客。新車ディーラーにとって固定客といえる法人に対する販売量減少は大きな痛手となる。
法人客にとって経費削減効果が大きい新車リースの契約件数も減少が続き、経営存続の大きな不安要素となっている。「このままでは数年後に、大都市における新車ディーラーの大再編が起きる」と見る新車ディーラーの経営者も現れている。
「12年度以降の経営には自信がない」
09年度の国内新車市場は、前年同期比3.8%増の488万265台と4年ぶりに増加した。新車のうち登録車が09年8月に13カ月ぶりのプラスとなり、翌9月には新車販売台数全体が14カ月ぶりの前年超えへと転換。エコカーの減税と補助金の効果で09年度後半の新車市場はプラス成長が続き、通年度の実績も08年度の実績を上回ったわけだ。
だが、年度実績がプラスといっても、金融危機前の 07年度(07年4月~08年3月)実績との比較では8.3%減に止まっている。しかもエコカーの減税と補助金の効果で販売が伸びたのは、登録車のハイブリッドカーとコンパクトカー、さらに3列シートのミニバンとされ、市場全体が伸びを示したわけではない。登録車は、09年度実績が前年度比10.0%増の318万2073台と20年ぶりの2桁伸長を記録したが、それでも07年度比では7.1%減となる。
新車ディーラーの多くはバブル経済崩壊後に大幅なリストラを行い、このうち登録車の販売を中心とする新車ディーラーは、新車市場が350~400万台の規模でも経営が成り立つように体勢を立て直してきた。登録車の新車市場規模のピークは1990年度の590万台。過去最高の60%程度の市場規模でも黒字経営が可能となるようにした。
ところが市場の縮小は止まらず、07年度は340万台と350万台を切った。黒字経営に危険信号が点灯した状態のなかで迎えた08年度はリーマンショックの影響で290万台となり、09年度は政府支援で320万台まで回復したが、9月末でエコカー補助金が切れることを考えると10年度もプラス成長となることは難しいとみられている。
このため東京の大手ディーラーの経営者は「09年度後半と10年度前半の貯金で11年度までは、なんとか会社をやりくりすることはできる。しかし12年度以降の経営には自信がない」と漏らす。その経営者の不安は、これまで経営の前提としてきた350~400万台で推移するはずの登録車の新車市場規模が、将来的にも予測より低い水準で止まりそうな状況となっていることにある。
リースにも異変、車持たない企業増える
09年度後半はエコカーの減税と補助金で新車市場はプラス成長した。とくに登録車の新車販売は大幅な前年超えが続いた。ところが2月に東京の日産系の新車登録台数が前年を僅かに下回った。これは人気となったハイブリッドカーを持たない車種構成や、コンパクトカーの新型車が発売されていないことなどが影響したとされるが、最大の要因は東京の法人需要が低い状態にあることだ。
バブル経済崩壊後の不景気によって、法人客が自社の車両を新車購入からリース契約へと切り替える傾向は続いた。大都市に本社を構える大手企業はもちろん、個人経営の商店も新車リースを選択する時代となった。
ところがリース市場にも異変が起きた。日本自動車リース協会連合会がまとめた09年の新車リースの契約件数は50万台で前年比は21.5%の減少。新車販売に占めるリース車の比率は10.8%で前年を1.7ポイント下回った。新車のうち登録車のリース比率は10.3%で前年比2.4ポイント減、軽自動車のリース比率は11.7%で同0.5ポイント減となっている。
新車リースの減少は、例えば4年間の新車リース商品を購入した企業が契約期間満了時に再リースを選び、月々のリース料金を低く抑える傾向が続いていることにある。なかには再リースも行わずに、車を持たない企業も増えた。新車リース、再リースとも減少すれば、車両の整備量も減ることになる。これらが、法人客の多い大都市の大手新車ディーラーを苦しめている。
若年層の減少により新車市場が将来的に拡大することはありえず、近い将来、新車市場が数年前まで想定していた規模まで回復する可能性も低い。このため大都市の新車ディーラーの経営者たちは、自分の会社が3年後に存続できるのかを心配する。自動車メーカー各社は大都市市場に対して、てこ入れ策を打ち出せるのか。