強い元日本買い占めの可能性
実際に、いつごろ、どのくらいの幅で切り上げられるかはギリシャ問題などもあって不透明だが、中国としては5月下旬の米中戦略対話、6月26、27日の主要20カ国首脳会議(G20)などをにらみながら、慎重に判断すると見られる。幅については、中国は80年代後半のプラザ合意後の急激な円高という日本の経験を研究し、「円高による不況から脱出しようとしてバブルが発生し、バブル崩壊による長期低迷につながった、と分析している」(シンクタンク・アナリスト)といい、緩やかな元高しか容認しないとの声が一般的だ。「年率5%程度の切り上げ」(同)の可能性が高いとみられる。
元が上昇する、つまり元に対してドルが安くなると、他の通過に対してもドルの価値が下がったという連想が働き、円も元につられてドルに対して高くなる可能性もある。そうなれば、日本のドル建ての輸出にはマイナスだ。
ただ、日中の経済の勢いの差は歴然で、中長期的には円に対して元が高くなるのは必至。これは対中輸出には有利、中国からの輸入には不利なので、ユニクロなど中国で安く生産して日本に輸入している企業にはマイナスに働く。中国に進出している日本企業で、自動車のように現地調達が少なくて現地販売が多いところは円建て利益が増え、電機など現地での部品調達が多いところは円建ての利益が減る計算だ。
それ以上に問題なのは中国企業による日本企業の買収かもしれない。強い元になることで、中国企業が日本企業を買いやすくなるからだ。世界的にも資源を買い漁るなど中国の動きが強まりそうだ。