シドニー五輪女子マラソン金メダルの高橋尚子さん(38)が、民主党からの参院選出馬要請を断ったと報じられ、ネット上で絶賛されている。政治の勉強をした人がなるべきだ、というその持論が、幅広く共感を集めたからだ。
柔道女子の谷亮子さん(34)が2010年夏の参院選比例代表に民主党から出馬表明すると、ネット上では批判が殺到した。「ロンドンでも金を」と現役続行しながら、片手間に議員活動ができるのか、といった理由からだ。
「政治の勉強をした人が国民の代表になるべき」
それから2日後、今度は対照的なニュースが飛び出した。日刊スポーツの5月12日付記事「Qちゃん民主要請拒否 スポーツ現場主義」だ。タイミングを見計らったわけではないかもしれないが、谷さんと比較して、「高橋さんは『現場主義』を貫き活動をしていく構えだ」と報じられた。
記事によると、高橋さん側には、ある大物関係者を通じて民主党から参院選への出馬要請があった。これに対し、高橋さんは、「政治の勉強をした人が国民の代表になるべき」と断ったと、高橋さんの関係者が明かしたというのだ。
高橋さんは、女子マラソン初の金メダル獲得で国民栄誉賞を受賞しており、その立場から「どこかの一政党の代表にはなれない」とも考えたという。同じシドニー金の谷さんが出馬することには、「びっくりしました」と答えたそうだ。
ネット上にこの記事がアップされると、たちまち絶賛の声が広がった。
2ちゃんねるでは、スレッドが次々に立って祭り状態に。「さすがQちゃんGJ!」「Qちゃんが女神にみえた」といった書き込みが相次いでいる。
また、スポーツ界や芸能界からの候補者乱立にうんざりなこともあるようだ。元プロ野球選手や歌手、女優まで、与野党入り乱れてのタレント擁立合戦が繰り広げられており、高橋さんの考えには、「これが普通」「当たり前の対応だよな」との声も多く上がっている。
「政治は難しい世界ですし、片手間にはできません」
高橋尚子さんのマネジメントをしているARSでは、取材に対し、出馬要請を断った経緯は日刊スポーツ記事の通りであることを明かした。高橋さんの関係者が要請を受け、高橋さんと相談したうえで辞退したという。
参院選に出ない理由としては、「政治は難しい世界ですし、その知識がないと片手間にはできません」と話す。国民栄誉賞受賞は直接の理由ではないものの、「高橋は、賞をいただいたからには、自分が今できることを全うすべきと考えています。賞を安易に扱えないということです」。
具体的には、マラソン解説者やキャスターなどの仕事を通じ、スポーツ発展のために現場に立ち続けることだという。「二兎を追えば、一つのことを全うできなくなります。高橋の得意な分野でやっていきたいと思っています」
母校、大阪学院大の特任教授として、学生たちにスポーツを教えているほか、2010年5月11日からは、食生活の大切さを知ってもらおうと、北海道の農場で野菜作りを始めた。「Qちゃんファーム」と名付けられた農場では、今後、マラソン大会などのイベントもしていくという。
「野菜は人の口に入るから金メダルじゃないと許されない」。共同通信の記事によると、高橋さんは農場でこう語っていたという。政治も人の生活に響くから、やるとなったら「金メダルじゃないと許されない」と考えているのだろうか。