組合の反対が怖い?
そして、10年間で、政策金融、政府資産、公務員人件費の対GDP比をすべて半減するという長期目標ができた。もちろん、これは郵政を民営化することを織り込んだ上での話だった(郵政民営化で国家公務員だった郵政職員が民間に移管するので、その分公務員人件費が削減になる)。と同時に、郵政民営化とは別に、当面の総人件費をどうするかのプランも作ることになった。これも05年のはじめから議論して、最終的に、05年11月14日に総人件費改革基本方針としてまとまった。これを大雑把にいえば、総人件費は1割カットになっている。この方針は、国家公務員と地方公務員の両方に適用されている。これに対して、公務員の労働組合は厳しく批判した。当然、民主党はそれらの動きをよくみていた。
公務員労働組合は民主党を基本的には支持しているので、民主党は公務員総人件費について、「逃げ道」を作ってきた。それは、これまでのマニフェストで一貫して「国家公務員」の総人件費について○割削減という表現をとっている。これであれば、国家公務員を地方に移管して、国家公務員の人件費を削減して、その分だけ地方公務員人件費が増加しても、公約は守ったといえるのだ。しかし、政府の経済財政諮問会議の結論は、国家公務員と地方公務員の両方で総人件費の「1割カット」だ。これでは、民主党の国家公務員の総人件費を「1割以上カット」と叫んでもパンチがない。そこで、「1割以上カット」を「2割カット」に格上げしたのだろう。
問題は格上げしたものの、それを具体的に行う手順がまったくできていない。総人件費の2割カットはまったく不可能な話ではないが、それを実現するためには、給与法改正、国の地方支分局の地方移管が絶対に必要だ。ところが、給与法改正について閣僚たちは口ではやると言いながら、だれも手を付けない。担当部署を官邸に持ってくることもしていない。国の地方支分局の地方移管にも手を付けていない。具体的には、各省の持っている特別会計を地方に移譲しないと、地方支分局の地方移管は完全にはできないが全く未着手である。このままでは、総人件費2割カットが「公約倒れ」という普天間問題の再現になるのは間違いない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。現嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。