リーマンショック後の世界不況下でも成長を続けていた任天堂の失速が目立ってきた。任天堂が2010年5月6日発表した2010年3月期連結決算は、売上高が前期比22.0%減の1兆4343億円、最終利益が同18.1%減の2286億円と、7年ぶりの減収減益になった。主力商品の据え置き型ゲーム機「Wii」と携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」の販売台数が、そろって発売以来初の減少に転じたほか、09年の年末商戦で人気商品を投じて巻き返しを図ったソフト販売も、年間を通して見ると振るわなかった。
任天堂は三次元(3D)映像の新たな携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」(仮称)を年内にも発売するほか、新作ソフトを投入するなどテコ入れを図るとしているが、ゲーム機販売の頭打ちは今後も続くとみて、11年3月期も減収減益を予想している。岩田聡社長はこれまで「不況など関係ない」と語ってきたが、成長を続けてきた任天堂の神話は崩れてしまったのだろうか。
「ゲームに飽きるスピード速くなっている」
7年ぶりの減収減益の大きな要因となったのは、ゲーム機販売の落ち込みだ。06年発売のWiiの10年3月期の販売台数は前期比20.9%減の2053万台、04年発売のDSは同13.1%減の2711万台となり、初めて前年実績を割り込んだ。Wiiは09年秋、約5000円値下げしたことも響き、収益を大きく減らした。ソフト販売も「NewスーパーマリオブラザーズWii」など人気ソフトの発売の遅れが響き、同14.6%減の計3億4340万本と落ち込んだ。この結果、営業利益は同35.8%減の3565億円と4年ぶりの減益になった。
WiiとDSの本体はゲーム愛好者の間で普及が進んだとみられ、ゲームソフトについては岩田社長が会見で「人々がゲームに飽きるまでのスピードが速くなっている」と述べたように、人気ソフトの早急な開発が課題となっている。
アイフォーンでゲーム楽しむユーザー増加
ゲーム機やゲームソフトを取り巻く環境は変化している。アップルの「iPhone(アイフォーン)」などで手軽にゲームを楽しむユーザーが増えているほか、アップルの新型多機能情報端末「iPAD(アイパッド)」が日本でも発売されるなど、任天堂のライバルは次々と登場している。岩田社長は「アイフォーンが普及した米国でDSの販売が増えており、影響を受けているとは思わない。存在として異質のものだ」と反論しているが、「任天堂が他のゲーム機でできないユニークなソフトを出していくことが重要だ」とも述べており、危機感を垣間見せた。
今後の鍵を握るのは、年内にも発売する3D対応のゲーム機「ニンテンドー3DS」(仮称)となるのは間違いない。岩田社長は6月に米国で開かれる世界最大のゲーム見本市「E3」で3DSの概要を明らかにするとしている。任天堂らしいユニークで先進的なモデルとソフトを開発し、ゲームファンの心をつかめるか否かに今後の浮沈がかかっている。