「5月末決着」が絶望視されている米軍普天間基地の移設問題をめぐり、政府内に次々と奇策が浮上している様子だ。全国に米軍施設を分散させるというものや、施設のどこか一部について合意に至れば「決着」とみなすというものなど、最後の逃げ込み策に躍起になっている。
政府案では、自民党政権時代に決定した辺野古沖を埋め立てる計画を修正する形で、くい打ち桟橋(QIP)工法で滑走路を建設し、徳之島にヘリ部隊の一部を移転することが骨子になっている。
訓練をローテーション形式で、全国の自衛隊基地で行う
だが、鳩山由紀夫首相は2010年5月7日に行われた徳之島の3町長との会談で、受け入れを明確に拒否されるなど、実現は絶望的な情勢だ。
そんな中、浮上したのが「分散案」だ。北沢俊美防衛相は5月8日、
「沖縄でやっている(米軍)ヘリや飛行機の訓練を全国に散らして、半分とか4割方減ったと(沖縄県民に)実感してもらえるような案を今つくっている」
と明かした。
具体的には、ヘリ部隊の訓練をローテーション形式で、全国の自衛隊基地で行う。日経新聞が5月9日に報じたところによると、政府高官は検討対象が「42箇所ある」と語ったという。
「5月末決着」の定義を変更?
一方、この政府高官は、普天間基地のヘリ部隊の一部だけでも県外に移転する合意が米国側と成り立てば「決着」になるとの認識を示したという。いわば、「5月末決着」の定義を、今更変更しようとしている形だ。
だが、自衛隊施設を抱える全国の自治体が5月末までに訓練の受け入れに同意するのは事実上不可能だ。そんな中、前原誠司・沖縄及び北方対策担当相は、5月9日、記者から
「5月末以降も沖縄や徳之島と交渉を続けるのか」
と問われ、
「必然的に、そうならざるを得ない」
と発言。5月末以降も交渉は継続されるとの見方を示した。
いずれにしても、普天間移設問題が実質的に「決着」するメドがたっていないのは間違いない。