「中央銀行のオーソドックスな業務ではない」
日銀は「これ以上の追加緩和や国債買い取りは避けたい。でも、何もしない訳にはいかない」(アナリスト)という苦しい立場に置かれている。そこでひねり出した「奇手」が、6月に成長戦略をまとめる政府と歩調を合わせ今回の新制度というわけだ。日銀幹部は「これで夏ごろまでは政府の圧力をかわせるだろう」と読む。
だが、「個別産業への資金配分には踏み込まない」(白川総裁)といいながら、新制度はある程度、分野を絞った産業政策的な意味合いを持たざるをえず、「中央銀行のオーソドックスな業務ではない」(同)のは明らか。
実際、新聞各紙の論調は、読売、毎日が記事や社説で批判的に取り上げた一方、朝日新聞はなぜか一般記事では新制度にほとんど触れず、社説で「積極的な姿勢は評価したい」と持ち上げるなど評価が割れた。日経は、記事では「中央銀行の役割逸脱も」と懸念を示しながら、社説では、民間の金融機関の後押し、民間資金の呼び水の役割に徹するなどと釘を刺しながらも、デフレ脱却への日銀の役割を強調するなど、やや歯切れが悪かった。
それだけ、今回の日銀の一手は、評価が難しいということなのかもしれない。