食物アレルギーを患う子どもが10年間で2倍に増えた。卵、牛乳、小麦などを食べると皮膚に湿疹が出たり、目がはれたり、ひどい場合は呼吸困難に陥ることもある。
しかしアレルギーの原因はわからず、花粉症の増加と関係があるのではないか、食物添加物が原因ではないか、など様々な憶測を呼んでいる。
東京都福祉保健局は3歳児の保護者7247人に対し、アレルギー疾患に関する調査を2009年10月に行った(有効回答2912人)。1999年に行った同じ調査に比べて、「食物アレルギー」と「アレルギー性鼻炎」にかかる3歳児が急増していることがわかった。
「卵」「牛乳」「小麦」が3大アレルギー
食物アレルギー患者が全体に占める割合は1999年が7.2%、2004年が8.5%、09年が14.4%。アレルギー性鼻炎は1999年が6.1%、2004年が9.2%、09年が11.1%となった。
食物アレルギーは10年で2倍の急増だ。症状は「皮膚の湿疹」が90.8%で、ほとんどの子どもに見られた。「目のはれ」(19.7%)、「口のはれ」(19.1%)、「腹痛」(15.2%)、「呼吸困難」(8.2%)などもある。症状が出た食べ物は、「卵」(70.6%)が最も高く、次いで「牛乳」(26.7%)、「小麦」(9.7%)の順で高かった。
初めて症状が出た月齢は生後7~12か月が41.2%ともっとも多い。次いで0~6か月が29.2%で、生まれてから比較的早く発症することがわかった。
都福祉保健局健康安全部の担当者は、10年間で倍増した理由について、
「大気汚染、添加物の入った食品の増加、食生活の変化などが考えられます。ただ、食物アレルギーの仕組みは単純なものではなく、わからないことが多いのが現状です」
と話している。
「なぜ増えているのかは正確にはわからない」
小児免疫アレルギー疾患が専門の宇理須(うりす)厚雄先生(藤田保健衛生大学坂文種報會病院)は、
「花粉症やぜんそくなどアレルギー全般で子どもの患者が増えているので、食物アレルギーも増えているだろうという印象はあります。学校で取った統計や外国の論文などでも増えたと報告されています。ただ、なぜ増えているのかは正確にはわかっていません。今回、都の調査で患者が10年で2倍になったのは保護者が学校に食物アレルギーの申告をするようになり、データに正確に反映されてきたことも影響していると考えられます」
と話している。
宇理須先生によると、推測レベルではいろいろ言われている。
1つは食生活の変化で、アレルギーが出やすいものを食べる機会が増えたこと。キウイフルーツやアボカドといった外国の食べ物を食べてアレルギーになる子どもが増えているのは、ここ10~20年で一般に出回るようになったから。乳児にアレルギーが多い「イクラ」も昔は高級だったが、最近は身近な食材になり、よく食べられている。
また、花粉症患者の増加と関係しているという説もある。花粉症の人は特定の果物に反応することがあるからだ。例えば白樺花粉症の場合はリンゴや桃、梨などの果物を食べてアレルギーが出る可能性があると言われている。
食品添加物や抗生物質の使用が原因だという説もあるが、いずれも推測の域を出ないという。