いまの消費ポイントはエモーション
――商品を「売る」には、どこに注意を?
四元 いまの消費をひと言で表すと、「4E消費」といえます。低価格のエコノミー、環境にやさしいエコロジー、手軽で安心のイージー。それにエモーションの「4E」です。この中で、安さやエコ、安心はいまやあって当たり前。むしろ、この3Eを満たしてなければ消費者は振り向きもしないでしょうから、いわば買ってもらうための予選のようなものです。では、売れている商品となにが違うかといえば、4番目の「E」、エモーションです。
商品性はもちろんのこと、話題づくりだったり、店舗づくりだったり、仕掛けを駆使して一つのブランドイメージを確立し、上手に訴求することが重要です。それが消費者の心を揺さぶり、モノを買う原動力になるのです。
――「4E」で成功している企業には、どこがありますか。
四元 たとえば、ニトリ。安売りのイメージがありますが、それだけではありません。ニトリが消費者に訴えているのは、単品の家具ではなく、家具のある生活空間です。そのために、消費者が家具を使ってみたくなる生活空間を演出する店づくりをしている。
お店に行くと、リビングルームにはソファにテーブル、書棚などの家具を配して、消費者に「こんなリビングで、あなたはどのように過ごしますか」と提案するのです。想像力をかき立てた消費者が、目の前の家具がほしくなるような仕掛けを施すわけです。
洋服もそうですね。消費者はマネキンが着ている服を着ている「わたし」を想像して買うのです。ですから、どんなシチュエーションで、どんな人と過ごすときに着るのか、イメージできるようにディスプレイしてあげる。そうすると、消費者に買いたい気持ちが起こるのです。
四元正弘(よつもと・まさひろ)プロフィール
株式会社電通 電通総研・消費の未来研究部長。東京大学工学部卒業。サントリーでプラント設計に従事したのちに電通総研に転職。のちに電通消費者研究センターを経て、2008年7月から現職。主たる専門領域は消費心理・動向分析、地域ブランド開発、ワークショップファシリテーションなど。著書に「デジタルデバイド」、「出版ルネサンス」、「団塊マーケティング」など。筑波大学大学院客員准教授。1960年神奈川県生まれ。