「自分の気持ち豊かにしてくれる」 そう感じる商品が売れている
インタビュー「消費崩壊 若者はなぜモノを買わないのか」第8回/電通総研・四元正弘氏に聞く

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   消費不況といわれる中でも、「売れているモノ」はある。売れる商品とそうでないものの差はどこにあるのだろうか。電通総研消費者研究センターの四元正弘・消費の未来研究部長に聞いた。

ニーズでモノを買う時代ではない

「消費者の想像力をかき立てることがカギ」と話す四元氏
「消費者の想像力をかき立てることがカギ」と話す四元氏

――2010年にヒットしそうな商品やサービスを教えて下さい。

四元 ここ数年話題になった商品や注目された商品を分析し、売れる商品を7つの切り口に整理できました。まずは「次世代定番力」。人よりちょっと進んでいるという優越感が消費意欲を後押しする商品で、大ヒットになったハイブリッドカーや薄型テレビなどがそれです。次は「衝撃価格力」。立ち食いフレンチのような意外な低価格商品です。
   コメント付き動画共有サイトやつぶやき系ミニブログといった「ゆる繋がり力」や、「等身大共感力」は、戦国武将になれるグッズやパパ用の育児グッズなど、現代人の夢や不安に共感して応援する商品です。「1000円ポッキリ」といったシンプルで直感的な言い切りで消費者を納得させる「言い切り力」、洋食系ネタの寿司など、予想を裏切る組み合わせで驚かす「えっ、本当?力」、坂本龍馬ブームや平城遷都1300年などの「不動原点力」は、絶対的な存在感や信念に感動や癒しを求めています。これらが訴求のツボといえます。

――不況で消費者心理はどう変化したのでしょうか。

四元 いま、消費者の8割は節約を意識し、それはしっかり浸透しています。ただ、いまの節約は、同じものなら量の多いほう、多少であれば品質を下げても安いほう、また室内の温度は衣料で調整してムダをなくすといった「スマートな節約」が流行です。必要以上には買わないが、必要なものは買っているということです。では、どんなモノを買っているのか。
   たとえば、30歳代の独身女性には、高級下着や高級アイスクリーム、高級化粧品が売れています。結婚してなくてもこんなに生活が充実している、そんな思いを誇示したい欲求がどこかににじんでいますし、独身であることを楽しみたいという意味合いもあるでしょう。また仕事のストレス解消や、ふだん節約に努めていて、たまには贅沢したいという思いもあるでしょう。こうした商品は自分を元気にする、いわゆる自分へのご褒美ですね。
   消費者側の心理からすると、商品そのものよりもそれを使っている自分の気持ちを豊かにしてくれる、そこにお金を払っているという感覚なのだと思います。
   翻っていうと、消費者はもうニーズでモノを買う時代ではないということです。たとえば、寒いからコートを買うというのは「ニーズ買い」ですよね。ニーズでモノを買う人は、それが満たされれば終わりですから、同じような商品には手は出さないわけです。
姉妹サイト