ギリシャの財政不安に端を発した、欧州連合(EU)の統一通貨「ユーロ」の下落が止まらない。2010年5月7日の東京外国為替市場は、12時時点で前日17時と比べて2円41銭の円高ユーロ安の1ユーロ117円35銭~38銭で推移。110円台半ばを付けたのは約8年半ぶりのことだ。
この日は菅直人財務相が閣議後の記者会見で、ギリシャ問題について先進7か国(G7)の財務相による緊急電話協議を行うことを明らかにしたこともあって、午後はやや落ち着きを取り戻したが、「ユーロ安」の不安はなおくすぶっている。
ユーロ安で為替相場大きく動く
「ギリシャの財政不安をきっかけに為替相場が動き出し、取引が増えてきました」――。そう話すのは、外国為替証拠金(FX)取引の「くりっく365」を運営する東京金融取引所。くりっく365は米ドルやユーロ、豪ドルなど23種類の通貨を取り扱っているが、2010年4月は市場全体で862万枚の取引数量となり、月間の取引数量としては市場開設以来2番目に多かった。
5月に入って、ますます動きが活発になった。5月6日には、1日で163万枚を記録。1日の取引数量としては過去最高だ。
このうち、ユーロ円取引は米ドル円や豪ドル円と比べると少ないものの、6日のユーロ円取引は「買い」が6万8276枚、「売り」が1万8659枚と、「買い」が優勢だった。東京金融取引所は「個人投資家は多くの場合、値下がりすれば『買い』に動きますから、ユーロ安をきっかけに動いたことは間違いないでしょう」とみている。
また、7日は米ドル安も進展。東京外国為替市場では一時1ドル90円台を付けた。午後には1ドル92円台に落ち着いたが、第一生命経済研究所の嶌峰義清・主席エコノミストは、「米ドル安は米国の株価急落が原因。ただ、市場の混乱が大きくなると実体経済に悪影響を及ぼす。日本以外の国の金利は下がる余地が大きく、そうなると円高圧力が生じるので、今後は日本円の独歩高の展開も考えられる」とみている。