JR東海が、リニア中央新幹線(東京-名古屋間)の開業時期を従来計画から2年延期し、2027年にすることを決めた。建設資金に充てる東海道新幹線の運賃収入が08年秋のリーマン・ショック以降落ち込み、より現実的に計画に見直したのが理由という。
時期を正式に公表していなかった東京-大阪間の全線開業については2045年とし、名古屋-大阪間の建設見込み額を3兆3400億円とすることも発表した。
高速道路「休日1000円」も響く
同社の山田佳臣社長が2010年4月末、名古屋市内で記者会見し、発表した。山田社長は「合理的な前提条件に修正した」と説明し、同社の営業利益の9割以上を稼ぐ東海道新幹線の09年度の収入が前年度比8%減となったことを明らかにした。景気低迷による出張費の削減に加え、今年3月に始まった高速道路料金の「休日上限1000円」の割引制度導入などで鉄道から道路へ一部旅客が移ったことも響いたという。8%の落ち込みは1987年以降で最大だ。
同社がリニア東京-名古屋間の建設資金として見込んでいるのは約5兆1000億円。東京-大阪間の全線開業時期までには計8兆4000億円以上を自己資金と銀行借り入れで調達し、国の財政資金などは受け入れない計画だ。これまでは07年度の予想鉄道収入(1兆1730億円)の水準を毎年維持することを前提に資金計画を立てていたが、今回の計画変更は、これを従来より4%少ない06~10年度の平均値(1兆1260億円)を前提とするよう見直した。
海外事業を新しい収益源に育てられるか
不透明なのは、リニア開業後の想定旅客数については変更していないことだ。同社は27年の開業後、東海道新幹線及び在来線からリニアへ1割程度旅客が移転すると試算。その一方、時間の大幅短縮効果による料金体系の見直しと、関東圏~関西・山陽間の航空旅客のリニアへの移転が進み、開業前に比べて全社で5%程度の増収になると見込んでいる。正確な予測は困難だが、東海地域にある企業などの海外進出の進捗状況によっては、下ぶれする可能性を指摘する声もある。
同社は国内でのリニア開業時期延期と合わせ、米国ワシントンDC-ボルティモア間などに建設される高速鉄道へのリニア売り込みを強め、政府も積極的に後押しし始めている。国内では少子化なども加わり、今後も旅客需要の大幅な伸びが期待できないが、世界的には鉄道需要の拡大が見込まれている。海外事業を新しい収益源に育てられるかどうかも国内の資金計画を大きく左右するのは間違いない。