監査費用だけで数千万円負担
一方、企業の新規上場(IPO)が減っている背景には、上場コストの高騰がある。上場を希望する企業は、そのための組織体制を整備して監査を受ける必要があって、さらにそれに基づく内部統制報告書を金融庁に提出しなければならない。
IPOを希望する企業の多くは、東証マザーズや大証ヘラクレス、ジャスダックへの上場をめざす新興企業だ。体力が弱く、そもそも内部統制に経営資源を割けない企業は少なくない。
東京IPO編集長の西堀敬氏は、「監査費用だけで数千万円の費用がかかりますが、少なくとも、揺籃期にある企業が簡単に出せる金額ではありません。上場すれば、これに四半期開示のための監査費用がかかるわけですから、上場をためらうのもわかります」と語る。
新興企業の業績は景気の影響を受けやすいので、「業績を見て、証券会社が見送る場合もあります」(西堀氏)という。
上場の効果が薄れてきたと感じている企業もある。ジャスダックに上場した、ある企業は株式相場の低迷もあって、市場での資金調達が10億円にも満たなかった。上場維持には約1億円かかるとされるので、これでは銀行で借りたほうが安くあがることにもなりかねない。
株価しだいの状況が続くが、前出の西堀氏は「今秋、大証のヘラクレスとジャスダックの市場統合があります。それによって上場審査も変わってくると思うので、(IPO企業も)昨年度より多い、おそらく20~30社くらいにはなるでしょう」と、10年度に期待している。