雇用政策の柱「職業訓練」に力入れるべきだ
――35歳を救うのにはどうしたらいいのでしょうか。
吉池 雇用対策が解決の柱になるのは間違いありません。そこで、まず35歳の人には、企業が求める人材になってほしいと思います。そのために政府がやるべきことの一つは、職業訓練です。
自動車整備を仕事にしてきた人が医療や介護の世界にすぐに転職するのは困難です。それは当たり前のことで、いくら介護の仕事が人手不足だからといって、突然明日から「介護職に就いてください」と言われても、無理ですよね。転職するには医療や介護に必要なスキルを習得する必要があるし、それを教える職業訓練の場が必要になるわけです。 もともと日本は雇用政策にかける予算が海外に比べて少ない。とくに職業訓練費は、フランスやドイツなどに比べて大きく見劣りしています。ここを手厚くする必要があります。職業訓練による能力アップにより、企業が求めるスキルを身につけさせてもらい、非正規雇用者の正社員化が進めばいいですね。
その一方で、職を増やすには基幹産業の創出、育成が必要になります。これはそう簡単なことではありませんが、とても重要な課題です。
――企業にできることはないのでしょうか。
吉池 あります。これは正社員の場合ですが、いまの35歳は働いていても「自分の能力や実力に対する評価の満足度が低い」、「評価されていない」と感じている人が多くいるようです。会社内のポストが減って、出世が期待できないこともその背景にあると思いますし、会社の成長が停滞している中で、自分自身の貢献が評価されづらくなっていることもあるでしょう。そういった中で、彼らの「不満」を解消し、モチベーションを高めてあげる必要があります。
企業内にカウンセラーを置くことでもいいでしょうし、スキルアップのために職業訓練の機会を設けてもいい。そして、上司がちょっとした成功を日常的にほめてあげることも大切でしょうね。
吉池基泰(よしいけ・もとやす) プロフィール
三菱総合研究所事業開発コンサルティンググループ主任研究員。1992年入社。専門は、産業戦略、市場戦略。成長戦略、新事業開発、マーケティングなどのプロジェクトに従事。著書に「35歳を救え」(共著、阪急コミュニケーションズ)、「全予測 2030年のニッポン」(共著、日本経済新聞出版社)、「21世紀型 新産業」(共著、東洋経済新報社)など多数。