米アップルの携帯音楽プレーヤー「iPod」やパソコン「iMac」「MacBook」などが、主要家電量販店のインターネット通信販売サイトで相次いで販売中止になっていることが波紋を広げている。
関係者の意見をまとめると「ブランドイメージを守るため、アップルが価格をコントロールしようとしているのでは」ということになるが、アップル日本法人は「ノーコメント」と繰り返すのみで、真意は藪の中だ。
通販サイトが格段に安いということはない
この件に関しては大事な取引先に気を使う大手量販店側の口も重いが、ヨドバシカメラやコジマが「アップル社の意向でとりやめた」と認めるように、アップル側が4月に入って各社に取り扱い中止を通告したようだ。
店頭では継続して販売するとはいえ、通販サイトでiPodなどのアップル製品は人気商品。特に、音楽や電子書籍、動画などに対応する新型携帯端末「iPad」の日本での新発売も目前にしているだけに、イメージダウンを懸念する声も上がっている。さらに、アップルのインターネットサイトで販売継続するのはいいとしても、なぜかアマゾンのサイトでは販売を続けるというのも分かりにくいところだ。
もう一つ不可解なのは、量販店の通販サイトが必ずしも激しい低価格販売をしていたわけではない点だ。通販サイトで在庫処分などのためアップル製品も値引き販売されることもあるが、「店頭でもポイントサービスなどを受ければそれなりに実質価格が下がる」(業界関係者)ため、通販サイトが常に格段に安いということはない。このため、なぜ量販店通販サイトを「狙い撃ち」にしたのか、意図をはかりかねる流通関係者もいる。
価格競争避けるための中止なら独禁法に抵触
アップルは、ブランドイメージ維持のために、特に価格にはナーバスな「体質」といわれる。89年と99年にパソコンの販売体制をめぐり、独占禁止法違反の疑いで、日本法人が公正取引委員会から立ち入り検査を受けたことがある。89年は専門誌に並行輸入業者の広告を掲載しないよう圧力をかけたもので、99年は指定した価格に従わない販売業者に出荷に応じないなどの圧力をかけたとされるものだ。
今回の問題についても「小売業者にとって重要な販売ルートであるネット通販を、安売りや価格競争を避けるために中止したなら独禁法に抵触する」との指摘が専門家から出ている。「通販サイトで販売されないこと自体は、消費者にとってそれほど不利益でもない」という見方もあるが、「正当な理由がなければ公正取引委員会が調査に乗り出す可能性もある」を指摘する専門家もいる。