液晶テレビを若者が買わない理由
――この世代にモノを買ってもらうにはどうしたらいいのでしょうか。
松田 最近、若者に売れたといえば、日本コカ・コーラのミネラルウォーター「い・ろ・は・す」やサントリーのウイスキー「角瓶」。液晶テレビはどんどん値下がりしていますが、若者のうけはイマイチだそうです。若者が好きなのは、お笑い番組。高画質で大きな画面は必要ない。ワンセグで見ればいいと思っているからです。
「自分たちの気持ちを代弁してくれるもの」「他人にスマートだと思われるもの」を買いたいので、ただ「安い」というだけでは選んでいません。若者がモノを買わない理由をどう解釈し、分析するかで、売れるモノ、売れないモノの明暗が分かれる。
――とはいえ、大手のメーカーや流通企業が路線を変更するのは至難の業です。
松田 そうですね。でも大手も従来のようなモノづくりや売り方ではだめになることはわかっているはずです。例えば車です。ハイブリッド車にどこも力を入れていますが、この世代はついていかないでしょう。最近売り出されたホンダのスポーツタイプのハイブリッド車「CR-Z」は超人気らしいですが、主な客は30歳代の車好き世代だと聞きます。若者を捕まえるには、安くてエコで下駄ばきのような車。仮に、50万円台のソーラーカーが開発されれば、爆発的に売れるのは確実です。そうなれば世界の自動車メーカーに大革命が起きます。
20歳代後半はあきらめ、もっと若い10~20歳代前半をターゲットにした店づくりに力を入れている百貨店もあります。モノづくり産業にとって、嫌消費世代は面倒な存在かもしれません。しかし、貯金もあり、小金持ちなのです。チャンスはあります。この世代をどう消費に引っ張り出すか。日本経済の課題です。
松田久一(まつだ・ひさかず)プロフィール
ジェイ・エム・アール生活総合研究所代表取締役、日本マーケティング研究所代表取締役社長を兼務。1956年生まれ。同志社大学商学部卒業後、日本マーケティング研究所入社。情報家電産業、食品、日用品業界でのリサーチ、マーケティング、戦略経営の実務を経験。政府や自治体などの経済関係の専門委員も務めている。