難航している米軍普天間基地の移設をめぐり、政府案が大筋でまとまった様子だ。辺野古沖に移設するという点では自民党時代の現行計画と変わらないが、埋め立て方式ではなく「くい打ち桟橋(QIP)」と呼ばれる工法で滑走路を建設することが特徴だ。
QIP工法は「埋め立てに比べれば環境へのダメージが少ない」という利点があるとされるものの、過去にも滑走路建設方式のひとつとして検討されたが、結局は採用されなかったという経緯がある。それだけに、実現までのハードルは高い。
埋め立て方式に比べて維持管理費も高く付く
この政府案の骨子は、新聞各紙が2010年4月29日に報じたもので、(1)現行案を修正して、辺野古沿岸に1800メートルの滑走路をQIP方式で建設する(2)約2500人いるヘリ部隊のうち、1000人を徳之島に移すというもの。QIP工法では数千本の杭を海底に打ち込み、その上に滑走路を建設する。「埋め立てよりは環境への影響が少ない」という点に、政府側は魅力的に感じたようだ。
だが、このQIP工法は、自民党政権時代の00年から02年にかけて正式に検討され、却下されたという経緯がある。01年時点では、防衛施設庁(当時)が、(1)埋め立て(2)QIP(3)ポンツーン(海上浮体施設)の3工法・計8案を提示しているが、02年7月に合意された基本計画では、結局は埋め立て方式が選択されている。
なお、仮にQIP工法を採用した場合、着工から完成までの工期は約7年、建設費は建物や滑走路を除いて約6700億円かかるとみられ、埋め立て方式に比べると2倍以上の工費がかかるとされるのも難点だ。
QIP工法を見送った理由について、政府は03年2月25日の沖縄及び北方問題に関する特別委員会で、下地幹夫議員の質問に対して、
「施設の構造、維持管理、施設の安全対策といった技術的見地」
を挙げている。具体的には、(1)杭が破損した場合は、滑走路が使えなくなる(2)「さび止め」が必要になるなど、埋め立て方式に比べて維持管理費が高く付く、といった点を指していると見られる。
地元への還元が少ないと敬遠
さらに、基本計画が決定した際は、QIPについて
「『地元業者が受注する可能性は低く、地元への還元が少ない』(地元経済人)などの声があった」(02年7月29日、読売新聞)
との指摘もあった。つまり、「地元ゼネコンを潤さない案が敬遠された」というわけで、仮に「辺野古」を受け入れるとしても、自治体側も本音ベースでは消極的だ。
基本合意から8年近く経って「蒸し返された」形のQIP工法だが、02年時点で指摘された問題点を解決する方法は見えないままだ。さらに、QIPでも、海面に日陰が出来る分、サンゴに対する影響が出るのは確実で、やはり地元の反発も予想される。
さらに、連立の一角を占める社民党の福島瑞穂党首も「沖縄の人が納得しない」と強く反発している。鳩山首相は5月4日には沖縄を訪問し、政府案への理解を求める予定だが、地元の納得を得るのは難しい状況だ。