英会話学校大手「ジオス」が東京地裁に破産手続きの開始を申し立て、保全管理命令を受けた。国内の「英会話市場」は、放漫経営で破たんした「NOVA」によるイメージ悪化、国の補助制度の縮小に少子化、景気低迷もあり、縮小傾向がはっきりしている。
この間、すでに消えた小規模教室もあったが、積極的なテレビCMを展開し知名度が高かったジオスの破たんは、語学学校経営の苦しさを改めて世に知らせることになった。
生徒数の減少にリストラが追いつかず
ジオスの329教室は、07年に破たんしたNOVAを一部引き継いだ「ジー・コミュニケーション」が、7割に当たる230教室を「ジオス」ブランドとともに継承。閉鎖する99教室の受講生にもジー社が救済措置を講じる。
2010年4月21日に行われたジオス破産申請の会見で、須原一美取締役は経営悪化の理由について「業界全体が低迷していたところにリーマンショック後の景気低迷で生徒数が減少した」と説明した。「年間12億円分の経費削減に取り組んだが、売り上げの減少を補えなかった」とも語った。ジオスの顧問弁護士は「銀行団に融資の返済期限を延ばしてもらっていた」と明らかにした。生徒が次々と減る現実にリストラが追いつかず、金もまわらなくなり、破産してスポンサーに後を託す道を選んだようだ。
経済産業省の調べでは、外国語会話教室の受講生は2007年2月の約75万人から08年2月に一気に約36万人に半減、その後もジリジリ減っている。背景には、再就職支援の一環として国が設けた「教育訓練給付」制度で、「受講料の40%、最大20万円」を補助していたのが、07年10月に「20%、最大10万円」に引き下げられたことがある。さらに、08年秋のリーマン・ショック後の景気低迷は「学び」に対する家計の余裕を失わせ、企業の語学研修費の削減も誘った。
創業社長が破産申請に同意しない異例の事態
最近では、駅前の一等地に教室を設けるといった商売でなく、料金が「月8000円」などと格安に設定する、インターネット上の語学講習も支持を集めるなど、この業界もデフレと無縁ではなかった。従来型の英会話学校への逆風が収まる気配はなく、第2、第3のジオスが出てさらに業界再編が進む可能性は十分ありそうだ。
同時に、今回のジオスの破産申請を巡り、経営陣の意見対立が表面化している。
創業社長の楠恒男氏が申請に同意せず、取締役会の決議もない異例の事態となっている。ライバル社がジオスの一部役員を取り込んで破産に導いたとの説も聞かれ、楠氏が何らかの対抗手段をとる可能性もある。
取締役会の内紛とも絡んで、破綻のタイミングを「不可解」と疑問視する声もある。というのも、ジオスを含めて語学教室は受講料を1年間程度は前払いするのが一般的で、この4月下旬というのは、新年度に多くの受講生が受講料をまとめて払った直後ということになる。「この1、2ヶ月で急速に経営が悪化して破綻に至ったのか。その前から経営がかなり悪化していたはず」(企業再生に詳しい公認会計士)という疑問も出るところだ。今後、破綻の真相が解明されるかが、今後の注目点になりそうだ。