鉄道ファンといえば男性、とはいえない時代がやってきている。鉄道にハマってしまうお母さん達が4、5年前から増え、「ママ鉄」と呼ばれている。
「ママ鉄」同士のコミュニケーションも盛んで、ネットのコミュニティーでは鉄道イベントやグッズ購入、電車がよく見えるスポットなどの情報交換が行われている。
男性の鉄道ファンは「鉄ちゃん」、女性ファンを「鉄子」と呼ぶ。そして最近では、母親は「ママ鉄」、子供、主に男児の鉄道ファンは「子鉄」といった新語も生まれている。写真機材はプロ級のモノを携え全国を回り、日本の鉄道全線や車両を制覇するといったマニアとは違い、「ママ鉄」は子供が成長するまでの「期間限定」ファンであることが多いという。
「子供の歯に駅の名前を付けている」
「ママ鉄」はなぜ生まれたのか。豊田巧さんの著書「鉄子のDNA」にこんな分析が載っている。
最近の母親は子供の趣味に付き合うことが多い。例えば、子供がサッカーにはまれば、母親も子供の趣味に合わせる。それと同じように子供が鉄道に興味を持つと自然に鉄道が好きになっていく。「ママ鉄」は20代後半から30代半ばが中心。国内旅行ブームを体験したことが、「鉄」になるハードルを下げているという。
SNS「ミクシィ」には「ママ鉄」コミュが作られ、771人が参加している。ここでは電車の見えるカフェ&レストランやイベント関連の情報交換、オフ会の告知が行われている。また、「ウチは服や靴に電車の名前をつけてます」や、「子供の歯1つ1つに駅の名前を付けて電車の絵付きの歯ブラシで磨かせています」などと「ママ鉄」ぶりを披露している。
子供が鉄道に飽きると同時に「ママ鉄」も卒業
鉄道&おもちゃの情報誌「鉄道おもちゃ」編集長の武井豊さんによれば、もともと子供向けだった同誌がお母さん達にも読まれるようになったのは4、5年前から。そのため、お母さん達も楽しめるような誌面作りに変えている。ただ、あまりお母さんに媚びた内容にすると母親から「子供が楽しめない」というお叱りが編集部に来るそうだ。もともと鉄道ファンだったという人は少なく、子供に影響を受けて、自分ものめり込んでいった例が多い。
「母親と息子が2人でイベントに行ったり、電車に乗ったり、撮影に行ったりしています。イベント会場などを見ると、父親と息子に比べ、母親と息子で来ている例が5倍にもなっています」
と武井さんは打ち明ける。ファミリーで鉄道イベントに出かける場合もあるが、母親と息子というカップルが圧倒的だ。
今後も「ママ鉄」は増えていくのかーー。武井さんは目立って増えていくことはないと予想する。
「2歳から小学校3、4年生くらいまでは鉄道が好きですが、やがては飽きてしまいます。だから子供と一緒に楽しんでいたお母さんも『卒業』というパターンが多いんです」
もちろん子供がリタイアしても「鉄子」として残る「ママ鉄」はいるが、それほどは多くない、というのが武井さんの見方だ。