鉄鉱石大幅値上げで鉄鋼連盟会長の懸念
日本鉄鋼連盟の宗岡正二会長(新日本製鐵社長)は2010年4月21日の記者会見で、今年度の鉄鉱石の輸入価格が値上がりする見通しであることを受けて、「自動車大手などへの鋼材価格への転嫁を進めるが、難航しそうだ」との見方を示した。
同連盟の調べでは、鉄鉱石の価格は08年12月の1トンあたり114ドルをピークに09年は下落。2010年1月は同74ドル、2月は同76ドルの水準で推移している。ただ、これは「09年度分の価格交渉の結果として、値下げした価格が持ち越されているだけのこと。漏れ聞いているところでは、10年度は1トンあたり200ドルというのだから、上昇トレンドにあることは間違いない」と話している。
第一生命経済研究所の嶌峰義清・主席エコノミストは、「基本的に、消費者の所得は伸びておらず、デフレ期待の傾向は変わっていない。たとえば、燃油サーチャージ分を旅行代金に転嫁できない旅行代理店はかなりの痛手だし、トラック輸送も値上げとなるので、これをスーパーなどがどこまで吸収できるのか、ガマン比べになる」とみている。悪いことに、天候不順によって野菜の価格が高騰。限られた生活費が「食」に回って、ますます工業製品は売れなくなる。商品を売るために企業は、利益を圧縮してでも資源高を吸収する必要がある。
多くの企業トップが「10年後半くらいから業績が回復する」と予測していたが、資源高が足を引っ張りそうだ。