愛知県豊川市で一家5人を刺した30歳の長男は15年間、自宅に引きこもりがちだった。かつて10~20歳代に多く見られた引きこもりが、長期化して30~40歳代になっている。周囲がどう対応したらいいかわからず、家族も社会も長年、放置してきた結果だ。
愛知県豊川市の会社員岩瀬一美さん(58)の長男(30)が2010年4月17日未明に一家5人を殺傷し、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。各社の報道によると、長男は父親名義のカードを使い、ネットオークションで買い物し、200万円以上の借金があった。犯行に及んだ理由について、ネット接続を解約されて腹を立てたと話しているという。
30~34歳が44%でもっとも多い
長男は30歳で、15年前から自宅に引きこもっていた。このように引きこもり期間が長期化し、30、40歳代になっても引きこもっているケースは珍しくない。
全国で引きこもり状態にある人は推定100万人と言われている。東京都では推定2万5000人とされ、15~34 歳の男女3000 人に引きこもりに関する調査を07~08年に行ったところ、年齢別では30~34歳が44%でもっとも多く、20~24歳が19%、25~29歳が16%だった。引きこもっている期間は3~5年が25%、7年以上が19%だった。
長期化すれば、家族の負担も大きくなる。引きこもる我が子に金銭的な援助をしているという家庭は76%。家族の悩みを聞いてみると、「経済的負担が重い」は「大いにある」が25.4%で、「老後に不安がある」は「大いにある」が62.2%にのぼった。
NPO法人青少年自立援助センターの工藤定次理事長は、30年以上にわたり、引きこもる若者の自立援助活動を行っている。
「10~15年、引きこもる子は結構いますよ。家族がどのように対応したらいいかわからずに長年、放っといて、歳をとってしまったからです」
と指摘する。
きっかけは、不登校や社会に出て挫折を味わったりと様々だが、共通しているのは「このまま社会に出ても自分はダメにきまっている」といった具合に、自らを否定していることだという。
「ろくに社会に出ていないにもかかわらず。将来に希望や光が見いだせないんです」