大阪府の橋下徹知事が提唱する「大阪都構想」が本格的に動き出す。大阪府全域を「大阪都」とし、東京都23区のような「特別区」を設置。それによって政令指定都市の大阪市や堺市とその周辺の市を消滅させて、行政の一体化、効率運営を図るプランだ。
2010年4月19日には、府議会議員や市議会議員らが政党の枠を超えて結集する「新・大阪維新の会」が地域政党として立ち上がり、構想の実現を訴えていく。
「都」に移行して行政のムダをなくす
橋下知事の構想に、大阪府議会にはこの構想を支持する議員らが「大阪維新の会」を発足。当初は自民党議員6人だったが、じわじわ広がり現在22人になった。これがさらに拡大する。
4月14日の記者会見で橋下知事は、自民党の舛添要一元厚労相が掲げる経済特区構想に、「構想実現には受け皿として大阪都が絶対必要だ」と述べるなど、大阪都構想への意欲をみせる。一方の舛添氏も、自らが掲げる地方分権と地域経済の活性化を実現する「経済特区構想」について、「大阪」と連携していくことを明らかにしている。
こうした後押しもあって、にわかに盛り上がってきたようだ。
橋下知事の大阪都構想は、「大阪再生」の実現をめざしたもので、根底には「行政の効率化」がある。現在の大阪府を、広域行政を担う都と基礎自治体として住民サービスを担う、人口30万人規模の区と市町村に再編する。行政機能と財源を「都」に移譲・統合して、改めて都と市区町村の役割分担を明確にすることで行政の効率化を図るという。
たとえば、大阪には大学や体育館など「府立」「市立」の名のついた施設が少なくなく、これらが「ムダ遣い」との指摘がある。また現在、公共交通網の整備や、空港や港湾などの広範囲にかかわる事業などの重要な決定事項について、府は市の了解なしには動けないなどの支障があった。「都」に移行することで、こうした問題を解決しようというわけだ。
大都市にふさわしい予算と権限が得られる
もちろん、実現はそう簡単ではない。平松邦夫・大阪市長は大反対だ。じつは、「大阪都構想」は太田房江前大阪府知事も提唱していて、当時の大阪市長、磯村隆文氏が猛反対してうやむやになった経緯がある。
移行には大阪府議会のほか、大阪市や堺市など関係市議会の賛同が必要になる。また、総務省は、「大阪府が都に移行する場合、新たな法律、あるいは改正が必要になることが想定されます」という。
ところで、「都」と「府」の違いはどこにあるのだろう――。総務省は「都は大都市であり、都には市町村とは別に特別区を置くことができ、区域内との一体的な行政機能をもっています」と話す。一番の違いは「特別区」を設置にあるわけだ。
また、メリットについて総務省は次のように説明する。
税収面では、固定資産税や都市計画税などを特別区に代わって都が徴収し、特別区と決めた条例で決めた按分に基づき、一部を税収として得ている。その分、たとえば上下水道事業で市区町村が行っている事務処理を、都が代わって手がけたりしている。
また、都市計画事業は、法律によって市区町村に役割分担があって調整されるが、都はこれを一体的にみていくことができる。
いずれにしても、都になれば大都市にふさわしい予算と権限を得ることができるようだ。