携帯電波割り当て「世界標準に」 総務相発言で今後起きる革命

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   携帯電話の電波割り当てについて、原口一博総務相は会見で、「日本独自」のものから「世界標準」のものに再編したい考えを明らかにした。もし実現すれば、新規事業者の参入や国際的な競争が進み、サービス向上、料金値下げなどが期待できる。しかし、既存の携帯電話会社にとっては脅威のようだ。

   テレビのアナログ放送が終わり、2011年7月24日に完全デジタル化になると、電波の周波数割り当てに「空き」が出る。周波数の近いチャンネル同士の混信が少なくなるなどで、テレビの周波数割り当てを整理でき、電波の効率的な活用ができるからだ。

既存のテレビ局や携帯キャリア大手には脅威

「政治主導」の中身は?
「政治主導」の中身は?

   しかし、既存のテレビ局や携帯キャリア大手にとっては、ライバルが増える脅威に晒されることになる。

   そんな中で、原口一博総務相が2010年4月9日の会見で明らかにした「電波の再編成」はインパクトがあったようだ。このままでは国際的な競争に遅れてしまうなどとして、「世界標準」に合わせたい考えを示したものだ。

   原口総務相は会見で「例えて言うと、高速道路の中に自転車道が何本もあるのではないか。その結果、世界標準とずれるということになれば、正に日本はまた、競争の基盤を失う、あるいは損なう」と訴えた。

   「高速道路の中に自転車道」とは、どういうことなのか。

   総務省の電波政策課によると、携帯電話などではこれまで、音声の情報が中心だったため、周波数を細切れで使っていた。ところが、画像やデータなど大容量パケット通信の情報が級数的に増えてくると、自転車道でなく、幅の広い本来の高速道路として周波数を使う必要が出てきたという。

   そして、細切れの「自転車道」として、世界標準の周波数や通話方式に合わせていなかったため、国際的な競争に遅れる可能性が出てきたというのだ。

   原口総務相は、政府内で問題提起をして議論しているとして、この日の会見で具体的な世界標準への再編策については言及していない。とはいえ、通信政策に詳しい経済学者の間では、それがどんなものなのか話題になっている。

「電波開国」でIT産業はよみがえる?

   電波の「自転車道」について、総務省は、携帯電話の既存の周波数を「高速道路化」する作業はすでに進めている。さらに、テレビのアナログ放送終了後に残った跡地に当たる一部周波数について、2011年度以降に携帯用「高速道路」の一部として利用する考えだ。

   この周波数割り当てについて、阪大の鬼木甫名誉教授(情報経済論)は、次のように指摘する。

「これは、日本独自のやり方です。世界標準とは違います。既存の携帯キャリア大手に電波を配るため、旧政権時代からの路線でやっていることですよ」

   原口一博総務相の狙いは、この日本独自のやり方から転換し、世界標準に合わせることだと鬼木氏はみる。

「携帯の新規事業者から反対が出たのが大臣にも聞こえて、『それはまずい。検討し直せ』と気づいてくれたのでは。既存キャリア大手は、国際的な競争に巻き込まれて困りますが、第4世代(4G)の携帯電話が控えており、世界標準にしないと日本がますます孤立してしまいますからね」

   携帯の通話方式が海外と違い、日本が取り残されてしまった過去の失敗がある。それだけに、また出遅れれば致命的な失敗になるということだ。

   具体的な「世界標準化」として、原口総務相は、テレビ局が現在もマラソン中継に使っている周波数などの帯域を携帯電話用にも割り当てることを考えている模様だ。10年4月13日の会見で、J-CASTニュースの質問に対し、この周波数帯が世界標準からずれている可能性を示唆した。

   著名なブロガーで経済学者の池田信夫氏は、自らのブログで2010年4月9日、原口総務相の会見は政治主導で行われたもので、「『電波開国』でIT産業はよみがえる」と評価した。この周波数帯が使えれば、「ノキア・フアウェイなどの大手メーカーの端末が日本で使え、逆に日本の端末も世界に輸出できる」というのだ。

   ただ、この周波数帯について、総務省の電波政策課では、「テレビ局などが受信設備を変えるのには、コストがかかります。それに、適切な周波数への移行先がないと、短期間で交通整理するのは難しい」と言う。

   原口総務相がこうした課題をどう解決するのか。今後その「政治主導」の中身が問われそうだ。

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