女性なら誰もが歳を取っても若々しくありたいと願っている。しかし、現実には加齢によってバストやヒップが垂れて、刻一刻と体型は変化していく。体型変化には一定の法則があることがワコールの研究機関「人間科学研究所」の調査でわかった。また、変化の少なかった女性にはある共通点が見つかった。
下着メーカー、ワコールの研究機関「人間科学研究所」は2010年4月15日、加齢による体型変化に関する研究結果を発表した。1964年に発足してから毎年人体計測を行っていて、蓄積されたデータは4万人を超える。45年間、収集したデータを統計的に分析したところ、日本女性の体型変化の実態が明らかになった。
元の状態に戻った人はいない
4月15日に開かれたトークセッション。左から司会のワコール人間科学所長篠崎彰大氏、河田光博教授、間壁治子教授
加齢により大きく変化するのはバストとヒップだ。バストの方がエイジング(加齢による体型変化)が早く訪れ、40歳代で変化しない人は存在しない。また一度エイジングが進むと、元の状態に戻った人はいなかった。
人間科学研究所によると、体のエイジングにはある一定の法則がある。若い時には丸くて張りのあったバストは、ステップ1で上胸のボリュームが落ちて脇側の肉がそげ、さらに進むとバスト下部のハリがなくなってたわんで乳頭が下向きになり(ステップ2)、最終的にはバストが外に流れてバスト自体の位置が下がる(ステップ3)。
バストのエイジングを年齢別に調べたところ、下垂は20歳代から始まっていた。20歳代ではステップ1の状態が21%、ステップ2は12%に見られた。30歳代ではステップ1が49%、ステップ2は38%、ステップ3は4%。40歳代ではステップ1が46%、ステップ2は38%、ステップ3は16%。50歳代ではステップ1が10%、ステップ2は43%、ステップ3は47%となり、年齢が上がるほど進行しているのがわかる。
バストが垂れるのは、加齢によるホルモンバランスの変化や、バストの重さや揺れでバストを支えている「クーパー靱帯」が伸びてしまうこと、乳房表面の皮膚が柔らかくなり乳房を支える力が弱まるなどの要因が挙げられる。
自分の体型にあった下着つけると体型変化少ない
一方、20歳代から50歳代までの30年間の追跡調査を行った女性100人の中で、若い時の体型を維持している人は25%を占めた。詳しく調べたところ、体脂肪が少ない、筋力があって疲れにくい、ぐっすり眠れている、ストレスをうまく消化している、生活習慣病の該当者や予備軍が少ない、といった共通点があった。日頃から体をよく動かしている、規則正しい食生活を心がけている、といった傾向も見られた。
また、体型変化の少ない女性は自分の体型にあった下着をつけていることがわかった。バストの場合はサイズだけでなく、形ややわらかさのあったブラジャーを選ぶことが重要だ。ジャストフィットしたブラジャーをつけると、バストを美しく見せることができるといったメリットもある。
ジャストフィットしたブラジャーを選ぶ際にはバストの採寸が欠かせないが、20~50歳代の女性200人に行った調査によると、「いつも採寸してブラジャーを買う」と答えた人は14%にとどまった。「してもらわない」が48%、「たまにしてもらう」が38%となり、8割が毎回採寸をしていない。さらに、採寸してみたらブラジャーのサイズが変わった人は71%にのぼり、間違ったサイズのブラジャーをつけている人は意外と多い。年齢にあったブラジャーをつけることも大切だ。加齢とともにバストが柔らかくなって形が変わるため、例えば20歳代用に開発されたブラジャーを40歳代がつけるとバストを美しく整えることができないからだ。
4月15日に都内で行われた記者発表会のトークセッションで、京都府立医科大学大学院医学研究科の河田光博教授は、
「若い時には乳腺が乳房の大部分を占めていますが、授乳後や加齢が進むと乳腺が萎縮し、代わりに脂肪が増えます。すると乳房の重みが増してクーパー靱帯が伸びやすくなり、生活の中のちょっとした揺れが長期間続くと完全に伸びきってしまいます。靱帯は筋肉のように鍛えて強化することはできませんので、乳房の揺れでダメージが及ばないように日頃からケアする必要があります」
と指摘した。
共立女子大学家政学部被服学科の間壁治子教授は、
「体型、年齢にあったブラジャーを付けることでバストの下垂を予防することができます。いかに自分にあったブラジャーを探すかがすごく重要になりますが、残念なことに若い人達はその域に達していない人が多く見られます。1つのメーカーにもいろんな設計のブラジャーがありますから、まずは採寸してもらって、たくさん試着をしてみてください」
とアドバイスしている。