核安全保障サミットの夕食会の場で、オバマ大統領と「ある意味じっくり話ができた」と胸を張った鳩山首相だが、実際はすれ違いで、米国側が不信感を強めただけというのが真相らしい。
わずか10分間の会談の中で、オバマ大統領が鳩山首相に対して「きちんと責任を取れるのか」と発言したとも報じられているほか、米高級紙にも「サミット祭典での最大の敗者」「日に日に頭がおかしくなっている」と酷評される有様だ。記事に対して、日本政府は「一国の首脳に対する表現として非礼」と批判したが、そんな報道が出るほど両国間は冷えきっているのかもしれない。
オバマ大統領が「きちんと責任を取れるのか」
鳩山首相は2010年4月12日(米国東部時間)、夕食会での10分間の会談について、「ある意味、じっくりと2人だけで話ができました」と振り返った。オバマ大統領の反応については「私の方から申し上げるべきではない」として明らかにしなかった。
会談時間10分のうち、イランの核開発疑惑にも相当時間が割かれており、普天間問題の話ができたのは、せいぜい5分程度だとみられる。間に通訳を入れたとすれば、実質的な話が出来る時間は、さらにその半分だ。そのわずかな時間をめぐっても、米国側の不信感が浮き彫りになっている。
日本経済新聞が4月15日に「日米関係筋」の話として伝えたところによると、夕食会の席上で、鳩山首相が隣の席に座るオバマ大統領に「5月末までに決着させたい。大統領もぜひ協力願いたい」と述べたところ、オバマ大統領は「しかし、進展していない」と述べたとされる。また、時事通信では、「日米両政府の複数の関係者」の話として、オバマ大統領は鳩山首相に「きちんと責任を取れるのか」と発言したことを伝えている。
米メディアからの反応も厳しい。米高級紙のワシントン・ポストは4月14日の紙面で、「サミットの首脳の中では胡錦涛が一番だった」と題したコラムを掲載。著名なコラムニストのアル・カメン氏が執筆したもので、サミットに集まった各国首脳36人を「勝者」と「敗者」に分けて論じている。記事では、オバマ大統領と90分間も会談した中国の胡錦涛国家主席を、勝者の筆頭格と評価。胡錦涛主席以外にも、ヨルダンのアブドラ国王、マレーシアのラザブ首相、ウクライナのヤヌコビッチ大統領、アルメニアのサルキシャン大統領、ナイジェリアのジョナサン大統領代行、エジプトのアブルゲイト外相が、オバマ大統領との個別会談を行うことができたとして「勝者」として紹介された。
鳩山首相はそれでも「5月末までに決着」
鳩山首相は、これら「勝者」と対比される形で、
「飛び抜けて一番の敗者が、哀れで(オバマ政権の複数の高官の意見によると)日に日に頭がおかしくなっている、日本の鳩山由紀夫首相だ」
「唯一の残念賞は、夕食会で『非公式な』会談ができたことだ。メイン料理とデザートの間の、どこかだろうか」
と皮肉られている。さらに、普天間基地の問題についても、
「金持ちの息子である鳩山は、日本と米国を二分している主要課題をめぐって、オバマ政権の高官に対して、信頼できないとの印象を与えている」
と批判。5月末までに移転先を決定することが絶望的になっている点についても、
「ユキオ、あなたは同盟国(の首相)だということをお忘れか。(日本は、米国の)高価な核の傘のおかげで、途方もない額を節約しているではないか、それでもトヨタを買えというのか」
と切り捨てた。この記事に対しては、平野博文官房長官が、4月15日の会見で 「一国の首脳に対する表現としては、いささか非礼な面があるのではないか」 不快感を示し、「例え10分であろうが有意義な機会だった」などと会談の意義を強調した。
鳩山首相は、4月15日の囲み取材で、「5月末までに決着」の意味について、記者団に「『米国と地元の合意を得た唯一の案が発表される』ということか」と確認を求められたのに対して、「その通りだ」と、明言している。すっかり米国側の信頼を失ったかに見える鳩山首相が、5月末までの合意にこぎ着けるのは絶望的な情勢だ。