テレビコマーシャルとウェブサイトを連動させる手法に、変化が出始めた。これまでは、ウェブサイトに誘導して詳しい情報を見てもらうため、コマーシャルの終わりに「続きはウェブで」とナレーションが入り、ウェブ検索用のキーワードが表示されるのが一般的だった。
これに対して、「続きはツイッターで」というコマーシャルが登場した。1回140文字限定で投稿するテキスト中心のツイッターで、どのような効果をねらっているのだろうか。
画面下に「twitterで小説配信中!」と表示
本能寺に乗り込んできた敵の集団を間近にして、部屋で悠々と缶コーヒーを味わう織田信長。傍らにいる濃姫の呼びかけにも「慌てるでない」と逃げる気配もない。すると、敵が射掛けた矢で2人の背後にあった掛け軸が下に落ちる。現れたのは「非常口」――。
缶コーヒーブランド「ジョージア」の新製品テレビコマーシャルは、このようなコミカルな内容になっている。注目は最後の1コマだ。炎上する本能寺を外から見つめる2人のシーンの画面下に、「twitterで小説配信中!」と表示され、「本能寺は変」で検索するよう視聴者に促している。誘導先は製品の特設ウェブサイトで、ここまではよく見られる手法だ。サイトにアクセスすると、今度は「小説」を配信しているというツイッターのページのフォローを呼びかけている。
小説内容は、コマーシャルとの直接的なつながりはない。話の語り手として「つぶやく」のは信長ではなく、サラリーマンの「譲司阿太郎(じょうじ・あたろう」というキャラクター。缶コーヒーを買おうと自動販売機のボタンを押した瞬間に異変が起きて、気づいたら織田信長になりかわっていたという設定で、物語が展開していく。
「ウェブを補完」程度の期待なのか
「ツイッターで小説」が、商品の販促にどのようにつながるのか。日本コカ・コーラ広報本部によると、最初から「ツイッターありき」の広告戦略ではなかったとする一方で、若者を中心に利用者が増えているツイッターを使って仕掛けることで「話題が広がっていく可能性を感じました」という。ユーザーが「この小説おもしろいね」などとつぶやいたり、小説の内容をユーザーが「リツイート」(情報の再投稿)したりすることで、口コミのように商品の話題が広がっていく効果を期待したようだ。
小説という形式にしたのは、長編ストーリーを少しずつ出していくことで長期間、話題性を保たせるねらいだ。短い文章に区切って、気軽に読んでもらいたいとの意図もある。語り手のキャラクターも、「濃姫」をはじめ日替わりで変えていき、2週間にわたって話を続けていくという。
しかしこの試みは、コマーシャルから直接ツイッターの小説ページに誘導するのではない。いったんウェブサイトにアクセスさせる「続きはウェブで」と同じ手法なのだ。同広報本部は、「いきなりツイッターの『キャラクターページ』に飛ばしても、商品の説明がないのでユーザーは何のページだか意味が分かりません」と話す。
一方で、最初に特設サイトに誘導する理由は「まず商品に触れてもらいたい」というのが本音だ。ツイッターはまだウェブサイトを補完する役回りしか期待されていない、ともいえそうだ。今回の取り組みで成果が上がれば、今後ツイッターを本格的な「販促ツール」として直接コマーシャルからリンクさせる企業が現れるかもしれない。