「急加速問題」に端を発する大量リコール(無償回収・修理)問題に揺れるトヨタ自動車が、新たな難問を抱えることになった。高級車ブランド「レクサス」のSUV(スポーツタイプ多目的車)が、米国では権威ある消費者団体専門誌に、安全性に問題があると指摘され、さらに「買うべきでない」と評価されたのだ。
問題の車種は米国での販売をいったん見合わせることになったが、同誌の技術者は米メディアに対して「こんなにひどい動作をするSUVは見たことがない」と話しており、米国内での批判が高まるのは必至だ。
「買うべきでない」の評価は10年ぶりで、極めて異例
問題とされているのは、米国で販売されているSUV「レクサスGX460」の2010年モデル。米消費者団体専門誌「コンシューマー・リポート」(CR)が2010年4月13日(米国時間)、その安全性に問題があると指摘した。
同誌によると、高速で急カーブにさしかかり、アクセルペダルを踏むのをやめると、後輪が外側に滑るなどしたという。GX460には、電子的に車体のバランスを安定させる装置が搭載されているが、その作動が遅れるのが事象の原因だといい、同誌では、このトラブルが横転事故につながる可能性も指摘。消費者に対してGX460を購入しないように勧める結論を出している。同誌が、特定の車種について「買うべきでない」との評価を与えるのは、約10年ぶりで、極めて異例だとも言える。
CRは非営利団体が出版しており、自動車購入前にCRを参考にする消費者は多い。北米市場では大きな影響力があるとされる雑誌だ。そのため、米国でもこのニュースは比較的大きく取り上げられ、ABCテレビでは
「CRが、極めて異例の安全性に関する警告を発した」
などと報道。CRの技術者がABCのインタビューに応じ、
「我々は、実際に数百台の車両をテストしている。自分は11年間CRにいるが、こんなひどい動作をするSUVは見たことがない」
などとトヨタ側を批判している。
姉妹車種を日本で販売
米国トヨタ側も深刻に受け止めているようで、同日、
「GX460をめぐる事態を非常に深刻に受け止め、コンシューマー・レポートが確認した問題を確認し、修正することにした。現段階で、販売店に対してGX460の2010年モデルの販売を一時的に中止するように依頼した」
「技術チームは、コンシューマー・レポートが使用した条件で、GXの性能を向上させるべく、精力的に試験を行っている」
との声明を発表。北米とカナダでの販売を一時中止することを明らかにした。
今回問題化したGX460は、これまでの一連のリコール問題では、リコールの対象に含まれておらず、今後、新たなリコール問題に発展する可能性もある。
GX460は日本国内では販売されていないが、姉妹車種にあたる「ランドクルーザープラド」が日本市場などで販売されている。トヨタ自動車広報部では、「ランドクルーザープラド」の今後の対応方針について、
「現在、(米国以外の)他地域では、CRで指摘されているような事象は報告されておらず、現段階で問題はないと考えている。調査を進めているが、現段階ではリコールや販売中止の予定はない」
としている。