ルノー・日産連合とダイムラーが資本・業務提携した。フォルクスワーゲン(VW)とスズキが2009年12月に資本・業務提携を結んだのに続く大型提携で、リーマン・ショックを経て環境対応をにらんだ自動車業界の合従連衡がにわかに活発化したように見える。
3社提携は「スマート」部門から始まる
もっとも、この業界で合併・統合や提携の動きが途絶えたことはない。つねに連携は選択肢として検討され、協議され、その一部が現実のものとなってきた。製品で目に見える効果を生み出せるかが、ルノー・日産-ダイムラー、VW-スズキでも提携の成否を左右する指標になる。開発過程で文化の異なる技術陣がどのように折り合いをつけるかが一つのカギとなりそうだ。
「われわれの議論は『スマート』を新しくすることから始まった」(ダイムラー・ディーター・ツェッチェ会長)―。ルノー・日産とダイムラーの提携は、コンパクトカー「スマート」部門の赤字に悩むダイムラーが、量産効果を高めるためのパートナー探しに乗り出したことがきっかけとなった。スウォッチとの共同事業でスタートし、映画「ダビンチコード」にも登場した2人乗りの「スマート・フォートゥー」は都市におけるミニマムな移動体のコンセプトを持つユニークなモデルだが、ビジネス面で成功を収めているとはいえない。
今回の提携では、次期「スマート」4人乗りとルノー「トゥインゴ」を、現行「スマート・フォートゥー」と共通の車体構造で開発することが発表された。リアにエンジンを積み、後輪を駆動するRRレイアウトを維持することになる。
プロジェクトがダイムラー主導で進むことは明らかだ。ルノーはパッケージングに優れた小型車を低コストで造る技術やデザインに定評があるが、先進技術に強みを持つわけではない。日産との提携に見られたように、技術面での主張をごり押しすることなく、むしろ相手側の高い先進技術力を引き出してルノー基準のコスト競争力を備えた商品を仕立てることに集中するだろう。ルノーのカルロス・ゴーン会長(日産社長)は「グリーンな車は買える価格でなければならない」と強調する。
電気自動車ではEV技術に強い日産が関与
「スマート/トゥインゴ」には、電気自動車(EV)も用意される予定で、その際にはバッテリーを始めEV技術に強い日産の関与が予想される。日産とダイムラーの技術陣は、インフィニティ向けのダイムラー製大排気量エンジンの供給でも協業することになるが、この案件でも高級なメルセデスベンツ用エンジンをどうコストダウンするかが課題になる。
一方、VWとスズキの提携では具体的なプロジェクトが明らかになっているわけではない。特定の商品ありきではなかった点でルノー・日産-ダイムラーとは提携の様相が異なる。「われわれは技術主導の会社」(マルティン・ヴィンターコルン会長)というように、VWも小排気量過給エンジンとデュアルクラッチトランスミッションによる低燃費車の実用化や、EVをも見据えたRRのコンパクトカー「アップ!」など、技術に強みとこだわりを持つ。
対するスズキは低コストへの強烈な意識が全社に浸透している。かつて鈴木修会長兼社長が「そんな部品、開発しないでどこかからもらってこい!」と言ったエピソードが伝えられている。二輪車事業で川崎重工業と提携したものの、実効が上がることなく終了した背景には、開発やコストをめぐる意識の隔たりが大きかったという。VWとスズキがどのように折り合ってプロダクトを造り上げていくのか、未知数の部分が大きい。