会社更生法の適用で経営再建中の日本航空が、リストラのペースを加速させる。2010年1月の更正法申請時には3年間で1万5700人としていた人員削減計画を、今年度中に1万6000人以上と大幅に前倒しし、不採算路線の撤退数も大幅に上積みする。追加リストラの背景には、日航の経営再建を危ぶむ銀行団の圧力がある。
日航が1月19日に公表した事業再生計画では、人員削減のほかに、国内線17、国際線14の計31路線から撤退し、金融機関から3500億円規模の債権放棄を受けるなどの内容が盛り込まれた。官民共同出資の企業再生支援機構の支援を受け、京セラから招いた稲盛和夫会長の指揮下で再建に取り組んでいる。
法的整理後も毎月、赤字垂れ流している?
しかし、更正法適用からわずか2カ月余りで、当初の再生計画は練り直しを迫られた。撤退路線は47路線前後まで上積みし、人員削減は向こう1年で当初計画以上に切り込む方針だ。国内線では、名古屋・小牧空港の削減が目立ち、国際線は関西、名古屋に加え、成田発着の欧米便にも手を付ける。路線を圧縮することで、高給のパイロットのリストラも加速させ、人件費を減らす考えだ。
追加リストラの背景には、メガバンクを中心とする銀行団の圧力があった。メガバンクはそもそも、支援機構が打ち出した法的整理に難色を示し、イメージ悪化による客離れを警戒していた。現実に、法的整理に踏み切った1月の国際線利用者は、ライバルの全日空が前年同月比13.7%増なのに対し、日航は10.7%減。利用率を上げるために座席数を減らした結果でもあるが、日航の減収基調は続き、法的整理後も毎月、赤字を垂れ流している状況とされる。
当初から支援機構の再建手法に不信感をもっていたメガバンクは一向に改善しない日航の経営に不満を強めた。3月には支援機構に対し、日航向け債権の買い取りを要望。赤字体質脱却のための抜本処理に踏み切らなければ、日航支援からは完全に手を引く姿勢をにじませた。
更正計画すんなりとまとまるか予断を許さない
日航は支援機構や日本政策投資銀行から注入された資金でなんとかもっている状況だが、6月末には更正計画を裁判所に提出し、自力再建に踏み出さないといけない。そのためには、メガバンクの融資による支えが不可欠。銀行団の強硬姿勢に、過度の人員削減には慎重だった稲盛会長も方針転換したと見られる。
ただ、再建手法については銀行団の中でも見解が分かれる。三菱東京UFJ銀行内には、人員や路線に大ナタを振るって早期の黒字回復を目指すべきとの意見が強まっているが、日本興業銀行時代から日航を支えてきたみずほコーポレート銀行には、過度のリストラは収益力を劣化させ、縮小のスパイラルに陥ると懸念する声もある。
全日空の主力行である三井住友銀は「お手並み拝見」とばかり、三菱東京UFJ、みずほの動向を見守っている状態だ。日航再建の行方は混迷を深めており、6月末を目標とする更正計画がすんなりとまとまるかは予断を許さない状況だ。