貸金業にかかわる「総量規制」の施行を2010年6月に控えて準備を進めている金融庁に、民主党ら与党議員らが噛みついた。4月2日に開かれた金融庁の政策会議で、大塚耕平金融担当副大臣が出席した議員らに示した「借り手の目線に立った10の方策」をめぐって会議が紛糾。これまで検討を重ねてきた貸金業制度プロジェクトチームや、事前の事務局会議などの内容が生かされなかったためだ。
大塚副大臣としては、この日の政策会議で合意を取り付けて、早々にパブリックコメントを募る腹づもりだったが、12日の週にも再度、政策会議を開くことになった。このままでは6月の実施が遅れる可能性も出てきた。
個人事業主は「年収ゼロ」で、お金を借りられなくなる
政策会議で配布された「借り手の目線に立った10の方策」は、金融庁が「総量規制」に関する課題とその解決策を消費者などにわかりやすく示した、いわば「手引書」。「イラストを多用して、手にした人がイメージできるようにした」(金融庁)もので、一般向けには4月7日に金融庁のホームページで公開した。
問題となったのは、個人事業主をめぐる扱いだ。事業所得を「年収」として算入する件では、総量規制のベースになる年収が、給与や恩給・年金、不動産の賃貸収入と定義されていて、いまのままでは個人事業主は「年収ゼロ」扱いで、お金を借りられなくなる。
これに対応する方策として、金融庁は「事業所得のうち、定期的な収入として認められるもの」を定義に加えようとしたが、「これでは現行と変わらない」と横ヤリが入った。ある貸金業者の幹部は、「だいたいどの収入が定期的なのか、判別は容易ではない」と話し、実効性が伴わないと指摘する。
また、個人事業主に事業計画書の提出を求めたり、計画作成の過程で相談に応じるなど、銀行の事業融資とほとんど変わらない対応を貸金業者に求めている。
借り手にとって敷居が低く、借りやすさが貸金業者の「売り」だったが、「これでは銀行を利用しろというようなもの」(会議に出席した与党議員)とあきれぎみだ。