寝ながら変身し、自転車でコケる 「仮面ライダー」イメージ壊れた

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   大人気ヒーロー「仮面ライダー」のイメージが「ぶっ壊れてしまった」「いや、シュールで面白い」とネットでホットな議論が交わされている。最近放送された回では、寝ながら変身し、イビキをかき、自転車に乗って転倒するといった無様な姿をさらしている。

   そもそもバイクに乗っているから「仮面ライダー」なわけで、なぜこんなふうに「変身」してしまったのだろうか。

   話題になっているのはテレビ朝日系で2010年4月5日に放送された「仮面ライダーW」29話。大学生が次々と「眠り病」にかかり、現実の世界に戻れなくなる、という事件が発生する。調査に向かったのは「仮面ライダー」の左翔太郎とフィリップ。2人が合体変身すると「仮面ライダーW」になる。今回の事件は夢の中に出る怪人が起こしたものだとわかり、翔太郎とフィリップは怪人を倒すため、夢の中に入っていく。

自転車に乗る「仮面ライダー」は史上初?

   「仮面ライダーW」には笑いを取るシーンもあるのだが、決してギャグやパロディーを扱ったドラマではない。29話では、主人公の2人は夢の世界に入るため、人目をはばかることなく、昼間の陸上競技グラウンドで枕を持参し眠りに就く。その時、翔太郎だけが「仮面ライダー」に変身し、イビキをかいている。

   夢の中で「目覚めた」2人は江戸時代にいた。怪人が現れると、岡っ引き姿の翔太郎は「仮面ライダー」に変身。江戸の街でバイクに乗り怪人を追跡する。追い込まれた怪人は特殊能力を使い、乗っているバイクをママチャリに変えてしまう。「仮面ライダー」は必死にママチャリを漕ぎ怪人を追う。しかし途中でバランスを崩し、かっこ悪く転倒してしまう。

    この展開にファン達は驚き、様々な議論が沸き上がった。掲示板「2ちゃんねる」では、「自転車に乗る『仮面ライダー』は史上初」、だとし、

「チャリに乗るとか『仮面ライダー』としてありえないだろ ライダーにギャグはいらねーんだよ屑」
「これで平成ライダーに見切りつけたわ もう一生みねえゎまぢ 」

といった書き込みが出た。SNS「ミクシィ」の「仮面ライダーW」コミュでは、今回の放送について100を超える意見が寄せられ、

「チャリンコで怪人追っかける仮面ライダー 朝から大爆笑WWW」
「今日のWは最高でした。息子をそっちのけで、ますますハマる一方です」
「今回は、まさにストーリー展開の壊れっぷりが面白かった」

などと書き込まれた。

「仮面ライダー」は時代が望んだヒーロー

   「仮面ライダー」は1971年4月からテレビシリーズが始まった。バイクを操る改造人間「仮面ライダー」の変身ポーズや必殺技「ライダーキック」が子供に大うけし、最高視聴率は40%にもなった。「ライダーベルト」などのグッズもバカ売れした。これまで30を超えるシリーズがテレビ放送・劇場上映されていて、悪をこらしめる正義のヒーローという筋が貫かれている。

   さらに、00年の「仮面ライダークウガ」以降、俳優がイケメン揃いだと評判になった。「イケメン番組」とも呼ばれ、子供の母親がファンになるという社会現象まで起きた。オダギリジョー、水嶋ヒロ、要潤、細川茂樹など多くの人気俳優を輩出した。シリーズ全般はシリアスな内容だが、07年から放送された「仮面ライダー電王」は、コメディータッチで描かれていて、「時を超えて 俺、参上!」などの決めゼリフとともに大ヒットした。

   40年近くも続いているこの人気シリーズは、時代の社会背景や、視聴者の嗜好に合わせ変化しているように見える。

   初代「仮面ライダー」の藤岡弘さんは10年4月5日付けのブログで、

「私の出演した仮面ライダーは見ていて恐かったと思う。緊迫感、恐怖感が1号は一番あったんじゃないかな」

と書いている。特撮を使った戦闘や、敵となる怪人の表現がリアリティにあふれ、子供達に強いインパクトを与えた。それだけでなく当時は、日本列島改造論が叫ばれた発展途上の真っ只中。安保闘争などで荒れ、日本全体に不安が渦巻いていた。だからこそ、当時の「仮面ライダー」は登場が望まれて生まれたヒーローで、子供達の見本となる象徴的存在だった、と藤岡さんは振り返っている。そして、

「時代の流れというのは、色々な事を教えてくれるね」

と結んでいる。イビキをかいたり、自転車に乗ったりするのも、この時代に望まれたヒーロー像なのかもしれない。

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